真夏と言えばさんさんと輝く日光、日光と言えば光合成。

 で、光合成といえば葉緑素、葉緑素を含む器官は葉緑体ということで、今回は葉緑体についてです。


 葉緑体とは、細胞内にある小器官です。

 この中に葉緑素があり、ここで光合成を行い糖を作ります。

 それだけでなく、アミノ酸や脂質とか、色んなものも合成できます。


 葉緑体内には葉緑素のみならず、酵素もあれば、DNAやRNA、リボゾーム(遺伝子の情報を読み取って、タンパク質を合成するための器官)などもあります。

 まるで、それ自体が一つの細胞といってもいいくらい、充実しています。

 というのも、実は葉緑体は元々、シアノバクテリアという微生物が起源だったためとされています。

 これが他の微生物に、いわば食べられたまま中で活動しています。

 食べるというのはちょっと想像しづらいかもしれませんので見てきたかのように言うと、
 シアノバクテリアと別の捕食した微生物が隣り合っていて、捕食側がアメーバのようにシアノバクテリアの周りをグルリと取り囲んで細胞内に取り込み、自分の身体の一部にしてしまいます。

 通常は、そのあと消化するわけですが、この場合は一つの器官として活動します。

 さしずめ、一つの会社が別の会社に買収されて、一事業部として活動するようなものでしょうか。

 このようなものを細胞内共生と言います。

 葉緑体の他に、ミトコンドリア(エネルギーを作り出す器官)も同様の細胞内共生の結果得られた器官として有名です。


 葉緑体の細胞内共生は、30億年前にたった一度だけ起こったとされています。

 なぜ一度だけかわかるのかというと、調べられた全ての葉緑体を持つ生き物のDNAが全て共通していたからです。

 そして、その宿主が色んな形に進化して、今の膨大な種類の植物になりました。

 ただし、これらとは別の種類の植物もいます。

 それは、ある植物を食べることにより、自分も葉緑体を獲得して光合成をし始めた生き物たちです。

 最初に葉緑体を食べた微生物から進化したものを一次植物、それを食べて光合成できるようになったものを二次植物と呼びます。

 二次植物で有名なところでは昆布やワカメなどがいます。

 微生物ではミドリムシも有名です。

 こういった、一次植物とか二次植物と言えないような面白い植物もいます。

 渦鞭毛藻という、藻の微生物です。

 彼らは自身は葉緑体を持っているのですが、別の藻を取り込んで、それまで持っていた葉緑体と入れ替えます。

 それを、更に別のと入れ替えたりもします。

 あるいは、別のを取り入れてしばらく光合成させた後、消化吸収することもあります。

 かなりヤクザな生き方ですね。



 他に、軟体動物のウミウシという生き物も、面白い利用の仕方をします。

 ウミウシとは、海の中に済むナメクジみたいな生き物です。

 彼らは色んな食べ物を食べますが、その中に藻を食べるものもいます。

 そして、その藻の中の葉緑体を細胞内に取り込んで光合成を行います。

これを盗葉緑体といいます。

 二次植物と違うところは、取り込んだ葉緑体が遺伝せず、新しい個体はその都度取り込まなければならない点です。

 れっきとした動物でありながら、光合成も行えるというのは画期的ですね。

 
 研究者の中には、これを利用して、光合成できる動物をつくろうとしている人もいるようです。

 ここまでくると、面白いことは面白いですが、ちょっと怖いですね。

 100年後の人類は、光合成機能を持って食べ物もとらずに生活しているとか・・・


<参考にした本>


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