ここのところ雑草の話が多いですが、今回もしつこく続けて行きたいと思います。

 今回は、雑草の他の草との戦い方です。

 主なポイントを強引に二つにまとめてしまいます。

 一つは光の獲得です。

 もっとも分かりやすいのが、他の植物よりも背を高くしてより光をたくさん獲得する方法です。

 これは、これまで述べた多くの雑草で見られます。

 エノコログサやメヒシバ、セイタアカワダチソウ等々。

 こういうのは、作物にとって邪魔ですね。

 これとは逆に、背を低くして、わずかな光でも成長できるように進化したものも。

 いい例がコニシキソウ。

 地面を這っている濃緑色の草です。

 こういうのはあまり害にならないようなので、大目に見てやろう、という気にもなります。

 何故か上から目線ですが、実際は防除できずに放っておくだけです。

 寿命が長いことを利用して、光の獲得を有利にするものもいます。

 ヒメジョオンは、発芽して最初はそんなに生育が早くなく、エノコログサのようなイネ科雑草の生育の速さで圧倒されますが、日陰でもなんとか生き延びて秋を迎えます。

 そうするとイネ科の雑草は枯れてしまいますが、ヒメジョオンは秋冬に根に栄養を蓄えてじっと耐えます。

 そして、次の年、イネ科雑草はタネの発芽からやり直しになりますが、ヒメジョオンは春に一気に育ってイネ科雑草を圧倒します。

 このように、光をめぐる戦いは熾烈を極めます。

 光合成により栄養分を作り出す植物にとって、光を得ることはもっとも重要な要件です。

 動物が食料を得ようと戦いを繰り広げるのと同じですね。



 もう一つのポイントはアレロパシーです。

 アレロパシーとは、他感作用と訳されます。

 ある植物が出す化学成分が、他の生物に影響を及ぼす作用のことです。

 アレロパシーの多くが、他の植物の生育を抑える作用です。

 有名なのは、セイタカアワダチソウですね。

 根から、シスデヒドロマトリカリアエステルというものを出して、他の植物の生育を抑えます。

 ちなみに森林浴等で、フィトンチッドという言葉も使われますが、元々はアレロパシーと同じ意味です。

 ただ、アレロパシーというと根から出てくるものが多く、フィトンチッドというと空気中に揮発成分がでてくるもの、という住み分けが何となくあります。


 アレロパシーを持つ雑草は、数多くあります。

 シロザ、イヌビエ、メヒシバ、エノコログサ、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギ、等々

 雑草のみならず、有用植物でもアレロパシーを持つものは多いです。

 そば、ムギ、雑穀、サツマイモなどが、よく知られています。

 従って、雑草防除のためにこれらを輪作や混植したり、あるいは麦わらでマルチしたりすることが行われています。

 他には、カバープランツというのがもあります。

 有効なのがヘアリーベッチです。



 アレロパシーは、全ての植物に効くものではありません。

 例えば上述のヘアリーベッチは、広葉雑草を抑える効果は強いですが、イネ科の雑草にはあまり効きません。

 しかし、自分自身には効くのが面白いところです。

 いい例がセイタカアワダチソウで、一時期の爆発的な繁殖が収まったのは、アレロパシーで自分自身が毒に当たったためとも言われています。

 この他、タネがその辺に落ちるだけ、という雑草は、多くがアレロパシーを持ちます。

 これは、一面に繁茂して共倒れするのを抑えるために、自主的に間引きする目的とされています。

 逆に、種が風で飛んだり、動物に運ばれたりするものはアレロパシーを持つものは少ないです。

 他者には必ずしも効かなくても、自分には効くという点は実に示唆に富んでいますね。

 さしずめ、エゴは身を滅ぼす、といったところでしょうか。

 人間も、自分の利益のために化学物質を出していますが、それがもたらす結果について、改めて考えた方が良さそうです。


<参考にした本>

高見沢茂富 帰化植物秘話 ほおずき書籍