コミュニケーションの上で、相手の感情を読み取ることは大変重要です。

 以前コーチングしていたときも、印象的な出来事がありました。

 その方は、会社をやめて独立したばかりだったのですが、大変前向きな方で、新しい仕事で色んなチャレンジをしたいと言っていました。

 が、お話ししていて何となく表情や口調が冴えなかったので、あえて直接的に言ってみました。

「本当は、その新しい仕事でチャレンジすることを、重要と思っていないように感じられます。」

 それを聞くと、相手ははっとした様子で、

「そういわれてみれば、確かに・・・」と納得。

 本人自身も、自分の感情に気付いていませんでした。



 このように、相手の感情を理解するとより深いコミュニケーションも出来るし、自分自身をよく理解することにもつながります。


 そのためには、上述のように複数の情報を読み取る必要があります。

 具体的な複数の情報とは、視覚、聴覚、嗅覚、また視覚の中でも顔の表情、全体的な姿勢、等々。

 脳もそんなふうに総合的に判断するように出来ています。

 脳は、相手の情報をいくつかの段階に分けて解読します。

 それぞれの感覚から得られた情報は、それに対する脳の各部に送られます。

 視覚は後頭部にある視覚皮質、聴覚は側頭部、顔の認識は紡錘状回顔領域、といった風にです。

 それらを、扁桃体というところを経由して上側頭溝と前頭前皮質内側部というところで感情を読み取ります。

 まあ、ややこしい名前はどうでもいいですが。

 こうした情報が複数必要なのは、少し考えてみれば分かるでしょう。

 もしも、しかめっ面をしている人を見ても、怒っているのか痛がっているのか分かりません。

 しかし、場所がコンサートホールで、叙情的な美しい音楽が流れているときであれば、ああ感動しているんだな、と分かります。

 なお、複数の情報といっても、嗅覚はやや特殊です。


 怒ったり泣いたりすると、身体から発する匂いが変わる、ということもないですから、匂いそのものでは感情はわかりません。

 しかし、別の情報で感情を読み取るのを素早く行わせる助けとなります。


 以上、私たちは普段無意識に、こうした処理を脳内で行っています。

 従って、ある意味当たり前にできます。

 ただし、上で述べたようなことを知っていれば、相手の気持ちが少しでも理解する手がかりになるのではないかと思います。

 また、こういった視点で、映画やドラマの名優の演技を見てみたら面白いかもしれませんね。