今回は何の脈絡もなく、活性酸素についてです。

 私たちは、呼吸して酸素を取り込みます。

 そして食べ物を取り込んだ酸素で分解して、得られるエネルギーを生命活動に用いています。

 植物の場合は、食べ物ではなく光合成でつくった自前の栄養分ですが、基本的には同じです。

 しかし、こうしてエネルギーを作る過程で副次的に毒物が作られてしまいます。

 これが活性酸素です。

 活性酸素は、栄養分からエネルギーを作るときだけに発生する訳ではありません。

 日光を過度に浴びたり、身体の一部が損傷したりした時にも出ます。

 従って、植物は特に活性酸素ができやすくなります。

 光合成をするために日光をたくさん浴びなければなりませんから。

 で、この活性酸素ですが、具体的な物質名としては
過酸化水素(H2O2)
スーパーオキサイド(O2-)、
ヒドロキシラジカル(HO・)
一重項酸素(1O2)

といった物質です。

 これらは、とても反応しやすい性質を持っています。

 つまり、身体の細胞やらタンパク質やらDNAやら、色んな物質と反応して傷害を与えてしまいます。



 そこで、酸素を利用する生物は、特定の酵素を作って、活性酸素を消去しています。

 これは動物も植物変わりありません。

 植物は特に活性酸素ができやすいため、このような酵素や抗酸化成分を多量に含んでいます。

 さらに、植物は動物に比べて色が濃いですが、これにより光を遮って、体内に活性酸素ができ過ぎるのを防ぐ働きもあります。



 このように、活性酸素は有害ではあるものの、生物の体はこれを逆に利用するようにもできています。

 例えば、我々の体内に有害菌が侵入すると、白血球がわざわざ活性酸素を作り、これにより細菌を殺します。

 また植物では、病気に冒された細胞を活性酸素で自爆させ、病気が広がるのを抑えます。

 毒さえも利用してしまう、生物の作りの精妙さには驚かされますね。



 なお、動物にとって、活性酸素は老化を早める働きがあるともよく言われます。

 従って、これを抑えるための食品やサプリメントもよく使われています。

 植物は抗酸化物質(ビタミンやミネラル、ポリフェノールなど)が多量に含まれているので、野菜や果物を積極的にとることが勧められます。

 が、最近の研究では、必ずしも活性酸素が老化を進める結果は得られていないようです。

 センチュウやマウスの遺伝子を組み換えて、活性酸素を除去する酵素を作れなくするような実験が行われています。

 その結果彼らはどうなったかというと、どうもならずにピンピンしているそうです。

 また、センチュウを活性酸素が多量に出るような状態に長時間さらしてみたりもしています。

 それでもやはり平気でピンピンしているそうです。

 活性酸素が色んな病気を引き起こす元になっているのは、ほぼ明らかだそうですが、それなのに寿命に関係ない、というのは一体どういうことでしょう?

 どんなに学問が発達しても、生命活動の謎は尽きることがないですね。

<参考にした本>

三村芳和 酸素のはなし 中公新書

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