日本は雨が多いと言われます。

 雨の微生物に対する影響については以前書きました。

 では土壌にとってはどうか?

 そしてそれを介して植物はどうなるかについて、考えてみたいと思います。



 その前に、そもそも土壌はどんな特性が必要なのでしょう?

 よく言われるのが、物理性、化学性、生物性です。

 物理性については、固相(土)、液相(水分)、気相(空気)の3相が適度なバランスを保っていることが必要です。

 そのためには、団粒構造をとっていることが重要です。

 で、雨が過度に降ると、水分過多で空気が少なくなってしまいます。

 また、雨水の衝撃で、団粒構造が物理的に壊れてしまいます。

 さらに、濡れたり乾いたりを繰り返すことにより、毛管水の働きで粒子同士が固まりやすくなり、これも団粒構造の破壊につながります。

 これを回避するためには、有機物を投入して微生物や小動物の働きを活発にさせることが考えられます。

 これらの生物の出す糞やら分泌物が、土の粒子同士を接着させる接着剤としての働きを持ちます。




 次に、化学性としては、土壌の肥料濃度と、肥料成分の土壌での保持力が問題となります。

 日本の降水量は蒸発量より多く、山がちで傾斜地も多いため雨水は圃場から流出することになります。

 この時に肥料成分も一緒に流れ出ることが考えられます。

 肥料成分としては、大きく分けて、アンモニウムイオンやカリウムイオン等のプラスのイオンと、硝酸イオンのようなマイナスのイオンに分かれます。

 このうちのプラスのイオンは、土壌の粒子や有機物の腐植により吸着されるので、水で流出しにくいです。

 マイナスイオンの方は、そのように吸着されにくいので、容易に流出してしまいます。

 こうしたこともあり、硝酸系の窒素肥料は、折角投入してもその後で大雨が降ると、ほんの一部しか植物に取り込ない可能性があります。

 ではプラスのイオンであれば大丈夫か、というとそれも油断なりません。

 問題となるのが酸性雨です。

 酸性雨と言うと、人間が油を燃やしたときに出てくるチッソやイオウの酸化物が原因と考えがちです。

 ですが、それらがなくても、雨は弱酸性になっています。

 空気中の二酸化炭素が雨水に溶けて炭酸となるためです。

 このような酸性の雨水により、土場中のアンモニウムイオンやカリウム、カルシウムなどのイオンは一部溶けて、流れさってしまいます。

 従って、これを回避するためには、土壌の腐植を増やしてプラスイオンを保持する能力を高める必要があります。



 余談ながら、さらに酸性化が進むと、土壌中のアルミがイオンとなり遊離するとも言われています。

 土壌中ではアルミは酸素イオン等と強く結びつけられており、普通は植物に害を与えません。

 ところが、土壌が酸性になりイオンとなって遊離すると植物に強い害を及ぼします。

 正常な細胞分裂が起こりにくくなったり、細胞膜が壊れたり、根の表皮がに亀裂が生じたり脱落したりします。

 そういった意味で、酸性雨というのは非常に害が大きいです。

 ただし、空気中の二酸化炭素が炭酸になる程度では、土壌の化学的緩衝能力がつよいため、Alが遊離することはなさそうです。



 話が反れてしまいましたが、水分は、土壌生物にも強い影響を及ぼします。

 前回微生物について述べました通り、過湿になると糸状菌から細菌が優勢となります。

 また、全体に活動も低下傾向となります。

 適度の水分で微生物は活発になります。

 ただし、微生物の活動が活発になるということは、土壌の炭素の消費量も増えることになります。

 すなわち、土が痩せてきます。

 さらに、消費して出てくる二酸化炭素が水と反応して炭酸となり、酸性に傾くことになります。

 とはいっても、その分は土壌中の化学的緩衝能力により補えます。

 植物の生産も増えるので二酸化炭素の固着という意味でも、トータルでは減ります。



 以上、ごちゃごちゃ述べましたが、ざっくり言えば、有機物を沢山投入するのがよい、という月並みな結論となります。


<参考にした本>

戸昌之 環境微生物学入門 朝倉書店

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