例えばトマト栽培をしていたとします。

 良い品質のトマトとは・・・

 糖度は高いが単に甘いだけでなく、酸味と絶妙のバランスを保っていて濃厚な味。

 それでいて、軽く頬張ると果汁がはじけてとてもジューシー、皮も薄い。

 食べたあとには、夏の香り、まぶたの奥に夏休みに帰省したおばあちゃんの姿が思い浮かんで少し涙ぐむ、

 作り方は無農薬、無化学肥料で除草剤も不使用、でも虫食いなど当然なし

 露地栽培で、太陽の光をいっぱいに浴びた完熟品

 そして、子育て中の若いご夫婦でも無理なく買えるお手頃価格

・・・こんなイメージでしょうか?

 しかし、工業製品での品質管理から言えば、上記のようなものは良い品質とは言いません。

 品質管理の面から良い品質とは、

「全ての面でお客様に満足していただける最低限の品質」です。

「最高の」ではなく、「最低限の」です。

 感動に打ち震えるような品質のトマトであれば、当然それに見合ったコスト(手間や時間、経費)がかかります。

 そうなると価格が高くなりすぎてお客様の満足は得られなくなります。

 あるいは生産者がそのコストを負担することにより再生産可能な農業経営ができなくなります。

 もちろん、ターゲットとするお客様によって価格や品質の違いは当然でてきます。

 それにしても、それに見合ったリーズナブルな価格や味の範囲というものは必要。

 職人気質の人はついつい品質面に過度にこだわる傾向があり、それも素晴らしい態度とは思いますが、少しはこうした考えも頭の片隅に置いておきたいところです。