暖かくなって、いろんな草が生えてきました。
農地はそろそろ雑草に悩まされ始めるころです。
ここで強い見方になるのが除草剤。
除草の手間を大幅に減らしてくれます。
除草剤には、その働き方により、色んな分類ができます。
除草の作用の仕方によって分けると、例えば光合成を妨げる働きをするもの、
植物のホルモンによるバランスを崩すもの、
ある種のタンパク質やアミノ酸を合成できなくするもの
等々です。
また、草を枯らす枯らし方も接触型と移行型とに分けられます。
接触型は、薬がくっついた部分が枯れるもの、移行型は一旦薬の成分が植物の中に取り込まれたのちに効くものです。
雑草が生える前に土壌にあらかじめ撒いて、雑草の発芽を抑えるものもあります。
こういった作用の仕方を組み合わせることにより、作物への害をほとんど与えずに、特定の植物を枯らすような選択性を持たせることができます。
例えば、イネには害を与えないけれどもイヌビエは枯らす除草剤とか、
メヒシバやスズメノテッポウなどのイネ科のみ作用するものなどです。
いろんな種類の雑草がいっぱい生えているような場合は、選択性がないほうほうがかえって便利です。
ちなみによく使われる○ウンドアップは、グリホサート剤といって、特定のアミノ酸の合成を妨げる除草剤です。
接触型で選択性はありません。
作物にあたらないように散布します。
ただし、遺伝子組換えダイズなど、○ウンドアップ耐性を持たせている種もあります。
アメリカのような大規模農地では、チマチマと作物に当たらないように散布するのは大変なので、このような種と除草剤の組み合わせがよく使われます。
ところで、このように便利な除草剤も、繰り返し使っていくうちに効かなくなってくることがあります。
それが、除草剤抵抗性です。
日本では、1980年くらいから問題になりはじめました。
抵抗性ができる原因としては、二つ考えられます。
一つは、たまたま除草剤の効かない性質の草がいること
もう一つは、除草剤が効かない性質を持つように突然変異が起こることです。
どちらが主原因か、調べた人によると、たまたま除草剤の効かない性質を持つ草がいる方が、突然変異よりはずっと多いことが分かったそうです。
ということは、除草剤を撒くことにより、このような草を選別して育てていることにもなり非常に厄介です。
ただし、多くの場合はトレードオフの関係を持っているようです。
すなわち、その除草剤に強い代わりに、他の面では弱い。
例えば、他の色んな種類の雑草が繁殖している場所では、その抵抗性雑草は減る傾向にあります。
また、その種類の雑草を食べる虫や病原菌が多いときも、やはり減るようです。
逆に、現在の大規模農業のように一種類の作物を広い面積で単作しているような場所では抵抗性雑草は増えます。
抵抗性雑草に対する対策としては、まずは作用の異なる除草剤を用いることが考えられます。
光合成を妨げる除草剤を使っていたのを、タンパク質の合成を妨げる除草剤に替えるとか。
元々、抵抗性はある作用にのみ付与されているので、別の除草機構を持つ薬剤であれば効いてくれます。
しかし、最近は複合抵抗性が現れる危険性が指摘されています。
複合抵抗性とは、複数の除草機構の薬剤でも効かなくなる植物で、日本でも報告例がでてきています。
雑草の適応力にはただ驚くばかりです。
このような雑草の場合、除草剤だけではなかなか防除しきれません。
雑草に抵抗性を持たせないためには、月並みながらできるかぎり除草剤を使わないようする必要があります。
そのために、耕耘やマルチング、田畑輪換など色んな除草手段を持っておいて、総合的に除草したいものです。
参考にした本