先日、日本農業新聞に、カドミウムを吸収しないコシヒカリ開発という記事が載っていました。
それによると、カドミウムで汚染された土壌でも、この開発品種を使うと、ほとんどカドミウムが検出されなかった、とのことです。
これを見て、土壌をカドミウムで汚染させない方が先決だろう、とは思いつつ、気になったので調べてみました。
まず、カドミウムは亜鉛の不純物として含有していて、亜鉛を精錬(鉱物から金属に変えること)過程で汚染されるそうです。
日本の農業用地の土壌汚染としては、カドミウムが特に多いようです。
カドミウムは植物の成長も阻害されるし、人体にも悪影響を及ぼします。
人体に被害を及ぼした事例としては、イタイイタイ病があります。
腎臓が障害を受け、骨もスカスカになる恐ろしい病気です。
カドミウムにしても他の重金属にしても、金属そのものが害を及ぼすのではなく、イオンとなって体液中に溶解した時に有害となる場合がほとんどです。
余談ながら、イタイイタイ病が問題となった時に、鉱山の技術者が、デモンストレーションでカドミウムの金属棒を舐めたことがあるそうです。
金属棒であれば、水(唾液)に溶けず、体内に侵入しないため問題ないことを示したかったのでしょうか。
でも、もしも破片でも入っいて、それが食道を通って胃液で溶解して体内に取り込まれたら危険だと思います。
真似しないようにしましょう。(する人はいないとは思いますが)
本論に戻って、カドミウムのような重金属は微量でも植物の生育に大きく影響を及ぼします。
水銀、銅、カドミウム、クロム、亜鉛等々、微量でも害が出ることが知られています。
しかしながら、この中の銅や亜鉛は、植物にとっての必須元素でもありますので、非常に微妙な話ですね。
これらの重金属が、具体的にどのようなメカニズムで植物に悪影響を及ぼすかは複雑すぎて明確ではありません。
が、ざっくり言うと重金属が酵素と結びついて、酵素の働きを妨げるとされています。
従って、酵素と結びつきやすい金属が、害も大きい傾向にあります。
酵素との結びつきやすさは、電気陰性度という指標で表されます。
これは、分子内の電子を引きつける強さの尺度です。
もっと具体的に述べてみたいかったのですが、元素の種類や作物の種類によって変わりますし、複数の重金属の相互の影響や土壌条件など、いろんな条件が影響してても複雑です。
植物の側からは、重金属の害を防ぐような対策をとっています。
ファイトケラチンという物質を合成して、有害な重金属を取り込み、無害化します。
また、体内に取り込んだ重金属を液胞内に蓄えることもあります。
人間でも、有害物質を脂肪とか毛髪に蓄積すると言いますが同じようなものでしょうかね。
このような現象を利用して、逆に土壌の有害な重金属を除去する試みも行われています。
参考にした本
寺島一郎編 朝倉植物生理学講座〈5〉環境応答 朝倉書店