2月になりました。

 年が明けて、もう一ヶ月も経ってしまいました。

 少しずつ農作業も増えてくることと思います。

 今年の栽培方針は、だいたい決まりましたでしょうか?

 今回は、施肥と病害虫との関係についてです。

 施肥は、投入時期や種類、量など、微妙な調整が必要で難しいですが、こういった観点からも考える足しになればと思います。



 一般に、植物に必要な成分というと、窒素,リン酸,カリの他、カルシウム,マグネシウム,マンガン,亜鉛,ホウ素等々があります。

 これら全ての成分について、病害虫との関係が十分調査されているわけではありません。

 ですが、ざっくりと言ってしまえば、病気を防ぐには適量を施す、ということになります。

 当たり前すぎて身も蓋もありませんね。

 肥料の中でも、窒素が良い例です。

 よく、窒素を入れすぎると病気になりやすいといわれますね。

 実際にイネのイモチやタマネギの貯蔵中の腐敗など、窒素過多による弊害はいろいろと報告されています。

 しかし、窒素を入れることで被害が軽減されるという報告も種々あります。

 トマトの斑点病やテンサイのウィルス病などです。

 要は植物が健康に育てば、被害も軽減されるわけです。

 リンについても同様です。

 カリウムについては、入れすぎてもあまり害は報告されていません。

 単に、肥料としての効果が出ないだけです。

 一般に、窒素やリンは土壌中にわずかしか含まれていませんが、カリウムは元になる岩石の主要な構成元素で、豊富に取り込みやすいため、植物はそういった環境に適応しているのかもしれませんね。

 ただし、カリウムそのものの害はなくても、他の元素、例えばマグネシウムやカルシウムの欠乏による病害が起こる危険はあります。



 上記主要3成分以外で病気抑制に有名なのは、カルシウムです。

 細胞壁を強くしたり、細胞内のシグナル伝達を迅速に行って病原菌の対応を早める効果があります。

 カルシウムも、過剰による害はあまりありませんが、土壌がアルカリ性になったり、他の元素(カリウム、マグネシウム、リンなど)の吸収のバランスが崩れると健康に育ちません。

 この他、シリコンも有名です。

 通常、植物に必須な元素とは見なされていませんが、病害に対する効果は種々確認されています。

 イネやムギ、キュウリ、メロン、イチゴ、ブドウなどで菌の侵入部位に集積し、抗菌物質を作って繁殖を抑制する効果が確かめられているようです。

 その他、塩素、マンガン、銅etcの微量施用による病気の抑制効果も確認されています。

 これらの作用メカニズムはについては、まだ十分明らかにされていません。

 単純に考えると、通常は畑では不足しがちなので、適度にいれることにより生育が促進されるためではないかと思います。



 こうして見てくると、病気を抑えるにはバランスよく色んな栄養素を植物に適度に与える、ということに落ち着きます。

 これにより、植物は健康に育ちます。

 そして、健康になれば、少々病害虫が入ってきても自分の免疫力で撃退できます。
 
 そうした意味では、肥料も単肥でなく、色んな種類のものを取り入れる方が良いかもしれませんね。

 人間と同じですね。


参考にした本

日本土壌肥料学会編 施肥管理と病害発生 博文社