冬は土作りの季節ですね。
土作りといえば、真っ先に思い浮かぶのが堆肥の投入。
これにより、土壌中の腐植を増やします。
ところで腐植って何でしょう?
便利でよく使う言葉ですが、改めて何?と言われると言葉に詰まります。
ということで、今回は腐植についてです。
まずは漢字から。
ふしょくというと、似たような言葉で「腐蝕」、「腐食」、「腐植」などがありますが、ここでは「腐植」という字を使います。
「腐蝕」は、ものが腐ったり、金属が錆びたりすることを言い、「腐食」は「腐蝕」の略字です。
腐植の成分は、有機物からなります。
土壌中には、原料となる有機物がいっぱいあります。
枯れ草や糞など、生物の死骸が主です。
主成分は炭水化物、たんぱく質、脂質ですが、土壌中の微生物がこれらを餌にして食べることにより、分解していきます。
炭水化物の中には、糖質のような微生物がすぐに分解してしまうものから、リグニン(木を構成する主成分)のようになかなか分解しないものもありますが、とりあえずいずれも分解されます。
その中の多くは、微生物がエネルギーとして消費し、二酸化炭素として空気中に放出されます。
消費されなかった残りは、より小さい分子の、ポリフェノールやキノンと言った物質、あるいはアミノ酸等々になります。
これらの物質が土壌中で反応して生成するのが腐植です。
腐植は黒色の不定型の物質です。
その中でも、大きく三つに分類されます。
一つは、フルボ酸と呼ばれ、酸にもアルカリにも溶けるもの
もう一つは、フミン酸(もしくは腐植酸)と呼ばれ、酸には溶けないが、アルカリに溶けるもの
それから、ヒューミンという、酸にもアルカリにも溶けないものです。
腐植の効果は、さまざまです。
ミネラル分を水にとかして植物に吸収させやすくする効果、
土壌を団粒構造にする効果、
土壌中の養分が流出するのを防ぎ、土壌に保持しやすくする効果、
特定の成分濃度が高すぎて、植物が高濃度で障害が出るのを防ぐ効果
等々です。
ただし、最近の農耕地は、腐植の消耗が進んでいる傾向が強いようです。
ただでさえ収穫物を持ち出すことにより、原料の有機物が供給されにくい上に、耕耘による空気供給で分解が促進されているためです。
従って、腐植を補う必要があり、そのために堆肥等の有機物を大量に投入することが指導されています。
ただ、やはり堆肥を大量に投入するのは大変なので、腐植そのものを化学的に合成することも行われています。
腐植酸肥料というものがありますが、これは石炭から腐植酸を作り、アンモニアやカリウム、カルシウム、マグネシウム等と結合させたものです。
腐植の効果に加え、窒素肥料やカリウム肥料等々としても使えます。
少量でも効果はありますが、値段が高いので局所施肥に用いることが多いようです。
腐植は、有機物を投入しても土壌中で合成されるまで何年もかかります。
できるだけ減らさないように管理したいものですね。
参考にした本
藤原俊六郎 <a href="http://goo.gl/uAJzLq">新版図解土壌の基礎知識</a> 農文協
加藤哲郎 <a href="http://goo.gl/1B0lZ4">押さえておきたい土壌と肥料の実践活用</a> 誠文堂新光社