味噌と健康との関係について考えていく上で、塩分と高血圧について論じることは避けて通れません。
一般的な説として、塩分とり過ぎは高血圧や胃がんになりやすいとされています。
しかし、昭和50年頃までは、むしろ多量の塩分をとることが奨励されていました。
厚生省の食事摂取基準では、塩分所要量が15gとなっていました。
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(いちいち決めて頂かなくても結構、大きなお世話、という気がしないでもありませんが)
それが徐々にとりすぎは良くない、ということになり、現在では男性9g未満、女性7.5g未満が基準。
これは、上述の高血圧やガンと塩分摂取量との関係が指摘出したためです。
高血圧と塩分摂取の関係を、最初に言い出したのは、ダールという人です。
エスキモーや、日本の東北地方など、数カ所の地区の人の塩の平均摂取量と高血圧患者の割合を調べてみました。
その結果、塩の平均摂取量の多い地区の人ほど高血圧患者が増えた、というデータが得られました。
しかし、ちょっと考えれば分かる通り、このような調査では地域ごとの気候風土や済んでいる人の生活水準、寿命も違うのであまり当てになりません。
そこで、同じような調査がもっと大規模に、精密に行われました。
調査地点が、数カ所だったのを50カ所以上にし、かつ1カ所200人以上のデータを集めました。
その結果は、エスキモーのように塩をほとんど摂取しない民族では、確かに高血圧は極めて少なくなっています。
しかし、いわゆる文明社会というのでしょうか、ある程度の生活水準にあるグループは塩もかなり多量に摂取しており、そして摂取した塩分量と高血圧の関係は認められませんでした。
では、実際は塩と高血圧は関係ないのでしょうか?
そこで、さらに直接的に塩と高血圧の関係を調査するため、ネズミに多量の塩を食べさせ、血圧との関係を調べました。
その結果は、2つのグループに分かれました。
すなわち、塩を摂取するほど高血圧になるグループと血圧が変わらないグループです。
これは人間でも認められ、塩をとると高血圧になりやすい人は塩感受性の高い人、血圧の変わらない人は塩感受性の低い人とされています。
ちなみに、塩感受性の高い人は、全体の2~3割です。
また、全体の高血圧患者のうちの塩感受性の高い人は半数以下です。
さらに・・・
減塩すると血圧が上昇する人も、相当数いるというのです!
結局のところ、塩分摂取と高血圧の間には、関係があるのかないのか、未だに結論は出ていないようなのです。
同じく、塩分摂取と胃がんとの関係もあまりはっきりしていないようです。
その他、減塩により寿命が短くなったり、コレステロールが上昇する、という例もあるらしいです。
(ちなみにエスキモーの平均寿命は50才くらい)
如何でしょう?
何を信じればいいか分からなくなってきませんか?
こうして見ると、常識と思われているようなことでも本当にそうなのか、疑ってみた方がいいかもしれませんね。
風説を鵜呑みにせず、自分の頭で考えて合理的であると思う方を信じるようにした方がよいかもしれません。
そうすれば、たとえ失敗しても納得できますね。
参考にした本
橋本寿男 村上正祥 塩の化学 朝倉書店
・・・一見難しそうに見えますが、読んでみると意外に分かりやすいです。
塩と高血圧の関係を否定的に記載してあります。
伊藤敬一 食塩と健康の科学 講談社ブルーバックス
橋本寿男 村上正祥 塩の化学 朝倉書店
・・・一見難しそうに見えますが、読んでみると意外に分かりやすいです。
塩と高血圧の関係を否定的に記載してあります。
伊藤敬一 食塩と健康の科学 講談社ブルーバックス
・・・こちらの本では、塩と高血圧の関係を肯定的に記載しています。
同じ調査結果を元に書いていながら、正反対の結論を導きだしているところが面白いです。