楢山節考という小説があります。

 寒村に住む老婆が、雪の降る日に自ら進んで姥捨て山に行く話です。

 食料が満足に得られない貧しい村では、人減らしのために老人は姥捨て山に行かなければなりませんでした。

 衝撃的で、悲しいお話です。



 ところで、私の自動車が壊れて動かなくなりました。

 かれこれ21年間、乗っていました。

 あちこちガタがきて、もう限界かと思い、年初にディーラーのところに行って新車購入の相談をしていた矢先でした。

 でも本当はまだ未練があり、もうちょっと乗りたいと思っていました。

 でも、こうなってしまうと仕方がありません。

 きっと、私の車も自らの引退時期を悟っていたのでしょう。

 そして、私の煮え切らない態度を見て、自ら進んで命を絶った・・・

 愛車を見ながら、私は楢山節考の主人公の老婆を連想していました。



 私の愛車は、数日前の寒い夜の7時頃、片側二車線道路の右側車線を走っていました。

 その時は、ちょっとエンジンの回転音が弱々しかったのですが、寒いせいだろう、少し走ればすぐまともになるだろう、と、さほど気にも留めず、走っていました。

(つづく)