最近、ぶどう農家の方とお話をすることが多いです。

 そこで、時々、ぶどうの作り方について話を伺うこともありますが、ぶどう作りもいろいろと大変そうです。

 特に大変だと思ったのは、玉直しや適粒です。

 ぶどうの粒が混み合ってきたら、一粒一粒、玉を切り落としたり、ピンセットで玉の位置を変えたりするそうです。

 カボチャやスイカならよく聞きますが、ぶどう一粒づつ、とは!

 話を聞いただけで、気の遠くなるような作業です。

 ぶどうの中でも、贈答用の高級品を作る場合はこのような作業をするそうです。



 野菜でも最高級品となると、随分な手間をかけているようです。

 レタスの栽培をしている方ですが、被覆資材がすごいです。

 ハウスの中でトンネルとか不織布とか何とか、5重にものを被せているそうです。

 で、そのうちのどれかを朝晩開けたり閉めたり・・・

 やはり大変な手間でしょうが、品質を最優先にするとこうなってしまうのでしょう。

 こういった品質至上主義は、農業ではよく見られます。

 品質の中でも、特に外観至上主義と言えるかもしれません。



 これほど手間をかけても、それ相応の価格で売れるのであれば、十分価値のあることでしょう。

 が、もしここまでしても儲からないのであれば、考え方を変えてみてもいいかもしれません。

 すなわち、品質至上主義から品質第一主義への転換です。

 どちらも同じ言葉に思われるかもしれませんが、実は異なります。

 品質至上主義は、高品質をとことん追求すること。

 上記のぶどうやレタスの例です。

 これに対して、品質第一主義は、品質を第一に考えること。

 そしてその上でお客様の利益を第一に考えることです。

 お客様にとっての利益は品質だけではありません。

 よく、QCDを満足させることが必要と言われます。

 Qはクオリティ(品質)。

 外観、味、栄養価等々ですね。

 Cはコスト。

 販売価格を抑えて収益を得るためには、生産コストを十分考慮しなければなりません(労務コストももちろん含みます)。

「いいものをより安く」とはいっても、労務費が出ないようでは論外ですね。

 Dは、デリバリー(納期)です。

 農業は、生産が気象条件に大きく左右されるせいか、納品が遅れても許される場合も結構あります。

「今年は天候不順のため、味が乗るのがずれ込みました」

 とかいうと、却って正直な作り手という印象がします。

 ただ、普通の製造業では納期遅れはダメです。



 これらの3つを全て満たす必要がありますが、農業ではなかなか難しいところがありますね。

 こういったことも、農業が産業として立ち後れているとされる所以かもしれません。

 ともあれ、(外観)品質だけでなく、その他のお客様の利益も含めて総合的に価値を高めることが必要。



 お客様が外観ばかり重視するから、外観にこだわらざるを得ない、との考えも無理はありません。

 でも、真にお客様のためを思えば、外観にかけるコストを別に振り分ける必要があるかも。

 また、あなたという正直な生産者が農産物を再生産し続けるためには、農産物価格ももう少し高くするのもお客様のメリットになるかもしれません。

 その必要性を伝えることも、農家の仕事の一つとなってきつつあるように感じます。