一見枯れ木

 私の畑では、ナスやトマトなど、まだ一部片付けていないものがあります(汗)

 枯れた様子を見ると、もののあはれを感じます。

 ただ、ナスは原産地のインドでは多年生植物だし、トマトにしてもハウスで水耕栽培したりすると何年も元気で木のように大きくなります。

 同じ植物なのに、ちょっと環境が違うだけでこんなに寿命が違うのは不思議な気がしますね。

 そもそも多年生植物って、何年生きるのでしょう?

 もっと言えば、植物の寿命ってどうなっているのでしょう?

 で、調べて見たのですが、なかなか面白いです。

 植物では、寿命という概念自体が曖昧なようです。

 例えば、ある植物の茎を切り取って、それを挿し木したとします。

 挿し木の部分は、やがて根が出て成長する。

 また、もう片方の根が残っているやつも、切り口の少し下から枝が伸び出し、そこから葉っぱが出てきて成長します。

 クローンですね。  こうしたの時は、この植物は寿命はどうカウントするのでしょう?

 別個体だから寿命は別々ともいえるし、より長く生きた方が、この植物の寿命ともいえるかもしれません。



 木もちょっと曖昧です。

 木は、ほとんどの細胞が死んだ木部細胞の集まりです。

 だからと言って、青々と茂った樹木が死んでいるとは言えません。

 この場合はどう考えるのでしょう?

 これは、細胞の死とその植物自体の死をごっちゃにしているから混乱するのです。

 植物の細胞自体の寿命は最長で30年くらいで、これは動物とそんなに変わらないそうです。


 あと、話は色々変わりますが、大賀ハスというのはご存知でしょうか?

 1951年に、大賀博士いう偉い先生が、2000年前の弥生時代の遺跡からハスの種を3つ採取しました。

 これらを育ててみたところ、うち一つが発芽し、成長。

 これから取れたレンコンは、色んなところに配られて今でも元気に花をつけているそうです。

 で、このハスは何才でしょう?

 タネからだと2000歳でしょうか?

 発芽からだと64才でしょうか?

 レンコンを植え付けてからだともっと若いのでしょうか?

 このように、植物の寿命を動物を同じような意味で定義するのは無理があります。

 動物だと、例えば犬であれば20年くらい、ネズミであれば3年くらいと、生理的に決まっているのですが、植物には基本的にはそのようなものはありません。

 また、寿命は生殖と大きく関係しています。

 生物が生きる最大の目的は子孫を残すことですが、動物については子孫を残すと、もうその動物は必要ありません。

 余計に長生きすると、食料が勿体無い。

 だから、遺伝子の中に、老化をコントロールする仕組みがあります。

 テロメアというのが染色体の端っこにあって、これが細胞分裂するたびにちびていきますが、これがなくなるともう細胞分裂ができなってしまいます。

 これが、その動物の持つ最大寿命ということになるらしいです。

 これに対して、植物はどんなに老齢になっても花をつけます(生殖することができます)

 それに、植物は長生きするほど大きくなるので、干ばつや他の生き物に食べられにくくなります。

 そういういう意味では、長生きしたほうが子孫を残すのに有利です。

 また、動物はテロメアというのが、細胞分裂とともに短くなってきますが、植物にはこのテロメアを合成する酵素を持っているため修復できます。
(動物でもガン細胞や生殖細胞は持っています)

 そういったことで、植物には決まった寿命がないようです。

参考にした本

鈴木英治  植物はなぜ5000年も生きるのか  ブルーバックス

高木由臣  寿命論  NHKブックス

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