「ゲップの音が聞きたい」と聞くと
この暑さで頭がどうにかしたのかな…と思われるかもしれない。
日常生活でゲップは嫌われる。
家族での夕食時、1人晩酌をする父親のゲップ。
外食時、「やだ、やめてよ~」との
母親の声と共に聞こえてくる小学生男子のおふざけゲップ。
彼女を助手席に乗せたドライブ時、
「炭酸を選んだのは失敗だった…」と
頬をふくらませ、ぐっと腹へと押し戻したゲップ未遂。
密かにでも、堂々とでも、ゲップは好まれることはさしてない。
ところが、愛されるゲップも存在する。
赤ちゃんのゲップ。これは好かれる。
「ゲッフッ」。音だけ聞けば大人のそれと遜色がない。
生後4カ月のウミちゃんのゲップは
素晴らしい音を響かせる“愛すべき号砲”だ。
生後約120日。
寝返りもまだ出来ない娘の楽しみはやはり“おっぱい”。
1日に6回ほどママに吸いつく。
その後、パパに手渡され「ゲップの儀式」へと移行。
小さな顔が肩にあたるよう縦に抱きかかえ、とんとんと背中をたたく。
運がよければ、ほどなくピクっとした振動にあわせ気持ちのいい音が響く。
息苦しさから解放され、ウミちゃんがすぅっと目を閉じる。
ゲップをすることでお腹は張った状態から解放され、
寝ている間にミルクを吐き出す心配もなくなるのだという。
上手くゲップをさせた後の寝顔ほど可愛いものはない。
逆にゲップが出ない時はどうにも気持ちが落ち着かない。
背中をさすり、とんとんとたたく。
「ん?どうしたかな?」なんて話しかけても
反応がない時は、寝ている時がほとんどだ。
肩に生温かい感覚を覚える時は、
「うわっ。ゲップじゃね、吐いてるよ!」とミルクを吐いている時。
顔がかゆくなるといけないと、ミルクがついたよだれかけを交換する。
仕切り直すも全くゲップの気配がない。
家族は皆、あの音を期待し、それを心待ちにする。
しかし、待ち時間が10分を超えると
「パパ、もういいよ諦めて寝せて」とママから声がかかる。
大袈裟だがゲップを上手く放出させられない時は、
親としての役目を果たせていない…くらいの気持ちになる。
例外的に「非常に残念なゲップ」もある。
おっぱいが終わり、ママから受け渡される際に出るゲップ。
それはエビ反体制に近い場合に起こる。
胸の部分が解放され「げっふっ」と
大音量が聞こえた際のガッカリ感といったらない。
子育てにおいてパパがママに勝てる可能性を残すが「ゲップ出し」。
不可抗力での予期せぬゲップは
野球言えば完封負けで聞くゲームセットを告げる審判の声に似ている。
意志表示のための「言葉」を操れない赤ちゃん。
あの短い破裂音を聞くたびに
「きょうも元気だよ。キミは今日も親としての役目を1つ果たしたよ」
と話しかけられているような気持ちになる。
きょうも小さな背中をトントンたたき、耳をすませながら思う。
嗚呼、早くゲップが聞きたい。