国立がん研究センターの2020年版統計資料によりますと、全がん死亡者に占める大腸がんによる死亡者は女性1位、男性2位でした。男女合わせて5万4千人が1年間でお亡くなりになりました。

さて、2012年の時点で既に大腸がんの患者さんの便には口腔内細菌であるFusobacterium nucreatum (フソバクテリアム・ヌクレアタム)が多数存在することが知られていましたが、2019年6月にはアメリカ医学誌「ネイチャーメディシン」に同じく2種類の口腔内細菌の関与が発表されました。

大腸がんステージ0、つまりごく初期の粘膜内がんの時期にのみAtopobiumparvulum(アトポビウム・パルブルム)やActinomyces odontolyticus(アクチノマイセス・オドントリティカス)という2種類の菌が増えていることが判明したとのことです。これらの菌は他に多発性ポリープ(腺腫)が発生する時にも増加します。因みにこの論文は、大阪大学・国立がん研究センター・東京工業大学 ・東京大学・慶應義塾大学・香川大学・日本医療研究開発機構 による共同研究です。

口腔内細菌は1日1.5ℓ出てくる唾液と共に飲み込まれ、その殆どが胃酸で殺菌されますが一部は小腸経由で大腸に到達します。その際、大腸フローラ(最近ではマイクロビオームと言い換えられることが多い)を乱して病気発生の引き金を引くことが推測されています。

口腔内細菌はなるべくならば毎日の歯磨きで洗面所の排水溝へ流したいものです。そして季節ごとに歯科医院でのプロフェッショナル・クリーニングをお受けになることをお薦めします。


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