新型コロナが猛威を振るう中、妻を支えることに必死で日々を過ごしています。

 

振り返って見ると、タグリッソ(3回目) → ビジンプロ → タグリッソ(4回目) → ビジンプロ(2回目) → タグリッソ(5回目) → ビジンプロ(3回目) と、交互に続けてきました。

 

タグリッソビジンプロという、現在日本で使えるEGFR-TKIとして、最も強力と思われる2種類の薬剤のタッグです。この間、腫瘍マーカーであるCEAは、100前後で、急上昇したり、急降下したり・・・を繰り返していました。この間、1年と9ヶ月ほど。現在と1年と9ヶ月前とを比較すると、CEAはほぼ横ばい、となっています。

 

2剤を代わる代わる使うことによって、血液脳関門を越えて、癌性髄膜炎を2年近く、制御することも、あり得るようです。

 

妻が、そのような道なき道と言える、辛い道のりを、進んで来れたことを、「本当によく、頑張ってるね。。。」と、そして、自分自身は、仕事も抱えながら、妻を十分に支えることが出来ているだろうか、と自問しています。

 

 

CEAは、横ばいであっても、高い水準で経過しており、脳の中では髄膜炎が続いて来たのです。

 

そして、L-Pシャントは、機能が次第に劣化し、妻は低髄圧症状(慢性硬膜下血腫に至る)に悩まされて来ました。

 

また、EGFR-TKIは、素晴らしい分子標的薬ですが、日々、副作用のケアは必要でもあり、そしてまた、短期間で襲ってくる耐性を逃れることはできないのでした。

 

 

こうして、現在、妻は病状が進行し、ほとんど笑顔が見られなくなっています。考えてみると、タグリッソ(3回目)の前は、ジオトリフであり、この間にCEAが大きく上昇したのでした。ここに、ターニングポイントがあったのかもしれません。ジオトリフ施行時は入院したのですが、その際の病棟担当医は、まだ若いこともあり、癌性髄膜炎に太刀打ちするには、力量が不足していたようでした。

 

 

・・・・・過去を振り返ってはみましたが、これからも現在と未来を見つめて、妻と共に力を尽くし、知恵を尽くして、一歩一歩、進んで行きたいと思います。

 

今年もまた、桜の季節を迎えることができました。

 

主治医の先生を始め、たくさんの関係者のみなさまに支えられながら、穏やかな日々を過ごせています。

 

 

タグリッソ(5回目)にスイッチしてから、腫瘍マーカー(CEA)が順調に下がり続けていたようですが、再び上昇に転じました。傍目にも、癌性髄膜炎による言語障害や聴覚障害が、再び悪化して来ているように見えていました。

 

5回目のチャレンジは、効果があったようなのですが、長くは続きませんでした。

 

そして、次は、ビジンプロ(3回目)です。

 

知恵を尽くし、力を尽くして、妻を支えて行くことができればと思っています。

新型コロナの先行きが不透明な中、とにかくこの嵐が過ぎ去ってくれることを祈っています。妻との穏やかな日々が続くようにと祈り、自分自身に出来ることをやろう、と、自分に言い聞かせています。

 

 

さて、CEAの変動から、タグリッソ(4回目)の効果が頭打ちと見えていたところで、ビジンプロ(2回目)にスイッチしていました。

 

ビジンプロ(1回目)は、短期間で打ち切りとなっていましたが、その際の状況から、奏功していた感触がありました。ビジンプロ(2回目)は再度、体重30kgの妻に対し、最大用量の45mgの投与で、血液脳関門を通過して、脳転移への効果を期待していました。

 

その結果としては、やはりある程度の副作用は避けられず、EGFR-TKIに慣れている妻にとっても、まずまずの強さで襲いかかって来たようです。

  • 下痢、それに伴う脱水
  • 爪囲炎

 

特に、脱水のためか、呂律が回らないような、意思疎通が難しい状況になったので緊急入院し、在宅で毎日、点滴(電解質輸液)を受けるようにもなりましたが、点滴を受けながら、頑張ってビジンプロの服用を続け、まずまず元気が出てきて、効果があったようでした。(画像等でモニタリング可能な病変が無いので、自覚症状の有無や、CEAの値から間接的に推定するしか無い状況ではあるのですが・・・。)

 

とは言え、下痢や爪囲炎がじわじわと日常生活に強い影響を及ぼすようになってきたところで、タグリッソ(5回目)へのスイッチを決断しました。

 

次は、第12次治療です。

ここまで来ると、さすがに、手持ちの札が、少なくなったのを感じない訳ではありません。しかし、自分には、これまでと同じように、力を尽くし、知恵を尽くすことしかできません。自分と妻にできる最良の方策を、思い惑い、彷徨うようにして、落ち着くように自分に言い聞かせながら、一歩一歩、着実に進んでいきたいと思います。

厳しい寒さと、コロナの猛威に、気持ちが暗くなる日々です。妻と二人で支え合いながら、ひたすら耐えて、春の訪れを待ちわびています。

 

 

さて、新年早々、明るい話題を書きたくて、去年の11月に発表された、診断年2010-2012年の5年生存率について、考えてみました。

 

世間でしばしば目にするのは、がんの告知の際に、医師から「余命○○」と言われたという話ですが、現在でもそのような、「余命宣告」は、一般的に実施されているものなのでしょうか。

 

診断年2015年の妻の場合は、余命について医師からお話はありませんでした。今振り返って見ると、それは非常に良いことだったように思います。ましてや、診断年2021年となった今や、肺腺がんIV期で「余命宣告」など、ほとんど意味がないことではないか、という気がしています。

 

 

というのは、肺腺がんIV期では、分子標的治療の発展に伴い、男性女性とでも、生存曲線はずいぶんと異なっているようです。また、以前以下で触れたように、年齢によっても差が開いてきているようです。さらに、免疫チェックポイント阻害剤が登場して、ますます、余命宣告という医学的行為(?)を、困難にしつつあります。

 

 

 

診断年2010-2012年の5年生存率が更新され、生存率解析システムKapWeb(カップウェブ) で「くわしいデータ」を見ていると、ついに、第2世代ALK-TKI(2014年発売のアレセンサ)や第3世代EGFR-TKI(2016年発売のタグリッソ)の効果が、生存曲線に明瞭に現れてきたようだ、と思っていました。

 

KapWebで、肺腺がんIV期、女性、年齢30代という、妻と同じ条件の場合・・・

診断年2009年ごろから変化が現れ、診断年2012年に至って、余命宣告という言葉のイメージからは、かけ離れた5年生存率へと、劇的に変化しました。(症例数が少ないため、誤差は大きいですが。)

ですので、もしも、2021年において、新たに肺腺がんIV期の告知を受けた際に、万が一「余命宣告」があった場合は、KapWebで「くわしいデータ」を見た方が、ある程度、参考になる場合があると思えます。

 

・・・しかし、それすら、診断年2012年のデータが最新ですから、10年近く前の状況であって、これから治療を受ける方々の進まれる道は、かなり異なったものになって行くのであろうと思われるのです。

冬の寒さに耐えながら、春の訪れを待ちわびています。

 

 

さて、日本肺癌学会の、肺癌診療ガイドラインが更新され、2020年版となっていました。

EGFRm陽性肺がんの治療には、RELAY試験に基づき、第一世代EGFR-TKI+サイラムザの治療が、追加されました。

 

もはや、ガイドライン診療とは言えども、単純なマニュアルであるかのように簡単に扱えるものでは、無くなって来たようです。私たち一般人に取っては、表層的の知識だけでは、追随するのが難しくなって来たように感じています。

 

 

例えば、EGFR-TKI+血管新生阻害剤の治療法が始まった頃は、アバスチンの上乗せ効果が生じるバイオマーカーに関して、曖昧模糊とした情報しかありませんでした。(がんサバイバーさんたちが良くご存じのように、血管新生阻害剤としては、当時は、サイラムザは使えず、アバスチンのみが使えていました。)

 

現在では、 RELAY試験に基づき、もっと情報が増え、サイラムザの上乗せ効果について、下記のような推定がなされているようです。とは言え、一般には、p53変異の有無を調べて頂ける機会は少ないかと思いますので、多くの患者さんたちは、やはり手探りで進んで行くしかない状況かもしれません。

 

EGFR変異陽性肺癌に対するEGFR-TKI術後補助療法の臨床的意義を考える

(日経メディカルOncologyリポート 、 2020/12/01 )

これは確実なものではないのですが、ラムシルマブを使ったほうが良いポピュレーションは、p53変異型では全体、p53野生型ではEx21.L858Rではないかという類推が、ベースラインの遺伝子変異を調べることによってできるのではないかと考えています。

 

 

この状況は、数年後にはさらに加速し、肺癌診療ガイドラインを理解するのは、今よりももっと困難になっているかもしれません。と言うのは、ドライバー変異がある場合に、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)をどうやって使えば良いか、という課題について、いくつかの手がかりが得られると共に、さらに多くの治験が試みられているようです。

 

 

KRAS/BRAF/MET肺癌はICIの効果に期待、EGFR/ALKはICI+αの治療を
ICIの効果が低いEGFRやALKなどは細胞障害性抗癌剤や抗VEGF抗体を併用

(日経メディカルOncologyリポート 、 2020/12/07 )

国際共同多施設共同レジストリー研究IMMUNOTARGETで、遺伝子異常のあるNSCLC患者551人においてICIの効果が検討されている。 (中略) この結果、遺伝子異常別の奏効率が、BRAFでは24%、KRASは26%と比較的高く、METは16%、「EGFRについても12%と比較的高いデータが出ている」が、RETは6%、ALKは0%であった。

IMpower150試験では、(中略) 「ベバシズマブを併用することで効果が上乗せされている可能性が示唆された」結果であり、そこには免疫に対するVEGFの作用が関連している可能性がある。

PD-L1の発現はEGFR-TKI治療前後で上がる患者も下がる患者もいるが、全体としては上がる傾向が見られた。さらにEGFR-TKI後の検体で、PD-L1発現が50%以上の患者は50%未満の患者に比べて、ICIのPFSは良好であった。 (中略) TKI治療によって免疫環境が変わり、その中で患者を選択すればICIによる有効性が得られる可能性がある。

 

こうして見てくると、確実に分かっていることはかなり少ない、というように思われます。しかしながら、希望が全くない訳でも無いのかもしれません。私たちは、現在と未来を見つめながら、一歩一歩、道無き道を歩んで行きたいと思っています。