ソフトバンクから巨人に移籍する、杉内投手に対する批判がすごい。

しかも、こともあろうにソフトバンクファンからの、誹謗中傷同然の批判がすさまじいのだ。

例えば、「裏切り者」程度ならまだ分かるが、「金の亡者」などというものについては単なるやっかみとしか思えない。

プロ野球選手は、「職業選択の自由」を制限されていると私は考える。

ドラフトがそれであり、移籍の自由がないのがそれである。

職業選択の自由は、職種のみならず働く場所（この場合チームを指す）まで自由に選択できるものだから、それができないプロ野球選手は、憲法違反にあたりかねない制限を受けているとも考えられるのだ。

（もちろん、興行としての野球を楽しくするために有効だとは思う）

それが「お勤め」を果たして移籍する権利を得（FA）、それを行使するのに何の問題があるというのだろうか。

また、金銭的な面についても、何の問題もないと考える。

プロスポーツ選手は個人事業主なので、明日には仕事を、それも永遠に失う可能性も少なくない。

ならば稼げるうちに稼いでおくにこしたことはないではないか。

Jリーグ大宮アルディージャの塚本選手は、骨肉腫にみまわれサッカー選手としてもう使えないと判断され、契約を解除されている。

明日からもう労働収入はまず期待できないのである。

杉内にしろ他の選手にしても、明日はわが身。

もらえるうちにもらって何が悪いのかと思う。

しかも払うのは球団であって、そのコストがチケット代金にそのまま乗るわけでもない。

ソフトバンクファンはまったく困らないではないか。

買いたい側が20億出すと言っているのに、断る必要などまるでない。

「金の亡者」という批判は、中傷でしかないのは分かるはずだ。

もちろん、ソフトバンクファンの来期以降に向けての不安は分かる。

投手陣ではホールトンも抜け、戦力ダウンは否めないのである。

だが、自分達のチームで育ち巣立ってゆく選手だからこそ、応援してあげるべきではないのだろうか。

またそんな素晴らしい選手を育て上げることが出来るチームを造り上げたことを、誇りに思うべきだ。

私なら私のスタッフを、「いくらで移籍させてくれ！」と言われたら、それが可能かどうかは別にして素直に喜ぶ。

もちろん断るが（笑)。

また、いなくなる選手を過剰に評価し批判することは、残る選手達にとってもプラスであることはまず無いだろう。

「杉内がいなくなったら、ヤバイ」そう言われて選手の中には発奮する者もいるだろうが、多くはよい感情を持たないのではないだろうか。

反対に、「杉内がいなくても、ソフトバンクの選手は皆優秀だから関係ないよ。」そう言えるくらいの気概が、ファンにもほしいものだ。

この辺は、ダルビッシュを送り出そうという日ハムと、態度に大きな違いがあるような気がする。

ダルビッシュの要求は途方も無いが、彼を「金の亡者」とよぶ日ハムファンはないだろう。

もちろん、ソフトバンクファンの過剰な嫌悪感は、杉内に対するこれまでの愛情の裏返しとも私は思う。

ドラマで大島優子がベッドシーンを演じた際に、彼女のファン（の一部）から激しい批判があったというが、それと似たようなものだろう（違うか笑）。

ソフトバンクの下位選手が、これまでの年棒から大幅増額で他のチームに移籍しても、ここまでの批判は出ないだろう。それだけファンに愛された選手だとも言える。

いつでもスターは、声援と批判にさらされなければならないのだ。

それにしても18番を与えるというのはすごい。

巨人のような頭の固そうなチームが左腕に与えるという、旧悪に近い伝統を打破したのは特筆すべきことだ。

そういう力が杉内にはあるのだし、そういう選手を育てたホークスは、やはり素晴らしいチームなのである。

いつか巨人の３番、１番を背負える選手が、現われるだろうか。