「胃薬を飲むと胃がんになる」その驚きのメカニズムと「危険なクスリ」の名前
2024/06/29
前編記事『PPI、タケキャブ、H₂ブロッカー…飲んでいると胃がんになってしまう「胃薬の名前」』より続く。
胃薬が胃がんの原因となるワケ
ではなぜ胃薬を飲み続けると、胃がんになってしまうのか。主な原因は2つあるという。新井氏が続ける。
「一つは、腸内細菌叢の変化です。本来は殺菌されて胃や腸にはいないはずの菌が胃に棲み着き、胃が荒れ、細胞ががん化すると考えられています。唾液などに含まれる口腔内常在菌は、ふつうは胃酸で殺菌されるので、胃や腸には棲み着くことができません。
しかし、胃薬を飲んでいると殺菌効果が弱まり、胃や腸に口腔内の細菌が多く留まってしまう。
なかでも歯周病菌は胃がんのリスクを高めると報告されています」
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もう一つはホルモンに原因がある。
「胃酸不足に陥ると、胃酸分泌を促すガストリンというホルモンが多く出ます。PPIやP-CABを飲んでいる人の血液検査結果を見ると、飲んでいない人に比べて2~3倍もガストリン値が高いのです。
実はこのホルモンに胃の腫瘍化を招くリスクがあり、胃がんにつながっているとみられています」(新井氏)
胃にとっては、一定量の胃酸が出ていることが自然な状態だが、長期にわたって胃酸を抑え続けると、不自然な状態が続き、思わぬ病をもたらす。
浅ノ川総合病院薬剤部主任の東敬一朗氏は、「胃薬を飲んで胃酸を止め続けていると、手術で胃を切除した人と同じような状態になっているともいえる」と警告する。
胃薬で骨折してしまう理由
こうした胃薬がもたらす病は、胃がんだけにとどまらず、さまざまな疾病の原因になっていることも、近年の研究からわかってきた。前出の新井氏が続ける。
「特にPPIに関しては、認知症、誤嚥性肺炎、骨粗しょう症、腸管感染症などのリスクが指摘されています。まだ仮説段階ではありますが、世界中で同じような研究が行われていて、データも出始めている。
たとえば誤嚥性肺炎の場合は、胃酸で殺菌できなかった菌が逆流し、誤って気管に入ってしまい発症します。腸管感染症もメカニズムは同じで、胃酸での殺菌が不十分であるがゆえに発症すると考えられています」
前出の東氏がとりわけ危険視するのが、胃薬による骨折のリスクだ。
「PPIやP-CABにはさまざまなリスクが提示されていますが、間違いなく上昇するのが骨折のリスクです。胃酸が少ないとカルシウムの吸収が弱まり、骨折につながる可能性があります。たとえば大腿骨の頸部骨折のリスクは、服用年数に比例して上がっていき、4年飲んでいると1.59倍にもなります」
胃の不調を整えるために胃薬を飲んでいたら、かえって胃がんなどの深刻な病気になる―この矛盾にはどう対処すればいいのか。前出の新井氏は「量を減らすのがいい」という。
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「たとえばタケキャブは20mgと10mgの2種類がありますが、漫然と20mgを長期処方されているケースが多いので、医者と相談してみてもいいかもしれません」(新井氏)
あるいはクスリを変えてみるのも手だ。
「PPIやP-CABよりは効果が弱い、H₂ブロッカーに切り替えてみるのもいいでしょう。いずれにせよ、毎日胃薬を飲まなければならない人は、内視鏡検査を定期的に受けることを強く勧めます」(新井氏)
別のクスリの副作用を抑える目的や、胃の調子が悪くなるからといって、胃薬を飲み続けていると、かえって悲劇を招くことになるかもしれない。
「週刊現代」2024年6月8・15日合併号より
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