自民が参院補選敗北、衆院補選は競り勝つ 逆風の岸田首相「所得税減税」表明も効果なし

2023.10.22

低支持率にあえぐ岸田政権への「直近の民意」の機会となった参院徳島・高知選挙区と衆院長崎4区の両補欠選挙が22日、投開票された。自民党は大接戦となった衆院長崎4区では競り勝ったが、参院徳島・高知選挙区は、野党に惨敗。1勝1敗に持ち込むのがやっとだった。

参院徳島・高知選挙区では野党系無所属の元職、広田一氏(55)が、自民新人の西内健氏(56)との事実上の一騎打ちを制した。午後8時の投票締め切りと同時に当確が出る「ゼロ打ち」の圧勝。秘書に暴行した元自民党議員の辞職に伴う補選で告示前から苦戦が指摘されていたが、自民は野党に議席を奪われた。

一方、北村誠吾元地方創生担当相の死去に伴う衆院長崎4区補選は、立民前職の末次精一氏(60)と自民新人の金子容三氏(40)が深夜まで激しく競り合ったが、岸田派所属だった金子原二郎元農相の息子で「岸田派総掛かり」で支援した金子氏が、逃げ切った。弔い選挙で、当初は「楽勝」との声もあったが、末次氏との差は、日を追うごとに詰まった。後継指名をめぐり北村氏の「遺言」とは異なる金子氏が公認されたため、地元支援者が猛反発。予想以上の苦戦は、地元組織が一枚岩になれなかったことも一因とみられる。立民など野党は金子氏の「世襲」も厳しく批判した。

同選挙区は10増10減に伴い、次期衆院選で「新長崎3区」になる。金子、末次両氏は再対決する見通しで、自民は再び、厳しい戦いを強いられることになる。

一方、岸田首相が投開票日直前の20日、期限付きの所得税減税の検討を与党に指示したことも、物議を醸した。「増税メガネ」などの増税イメージ払拭を狙うような対応で「あざとさが、有権者に見透かされている」(野党関係者)。手腕が注目された小渕優子選対委員長の「初陣」も、目標の2勝には届かずに終わった。

2補選は岸田首相の政権運営の行方を左右する戦いだったが、総裁派閥が支援した長崎4区で苦戦するなど、厳しい内容になった。首相の早期解散戦略は難しくなったとの見方もある。補選の結果が政権を揺るがしたこともある。春の衆参5補選は4勝1敗で乗り切った首相だが、今回は自身や自民への逆風に直面する場になった。【中山知子】

岸田文雄首相(2023年8月撮影)

岸田文雄首相(2023年8月撮影)© 日刊スポーツ新聞社

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