食品の「乳化剤」が腸炎とメタボ招く~ここでも腸内細菌が密接に関わっている
http://www.seibutsushi.net/blog/2015/08/3531.html
2015-08-06
食品に添加された乳化剤は、マウスの腸内細菌叢に影響して腸炎やメタボリックシンドロームを促進する、という論文がネイチャー誌オンライン版に掲載された。
乳化剤は腸の内側を守っている粘液層を破壊するが、その乳化剤の効果は直接的に粘液を壊しているのではなく、腸内細菌に働きかけた結果として間接的に起こっているようだ。
ここでも腸内細菌の深い関わりが見て取れる。腸内細菌も体の一部、つまり「多くの多細胞生物は微生物との共生によって生きている“微生物共同体”」なのだということを再認識する。
以下、「ネイチャー誌が警告、食品の乳化剤が腸炎とメタボ招く、ここでも腸内細菌の影響を確認」リンク からの転載。
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■「乳化剤」とは
「食品に添加された乳化剤はマウスの腸内細菌叢に影響して腸炎やメタボリックシンドロームを促進する(Dietary emulsifiers impact the mouse gut microbiota promoting colitis and metabolic syndrome.)」というタイトルの論文だ。ネイチャー誌オンライン版に掲載された。
タイトルにある通り、今回問題になったのは「乳化剤」だ。アイスクリームや多くの食品に乳化剤として添加されているものだ。乳化剤は材料をお互いに混ざ りやすくする役割がある。具体的な成分の名前で言うと、「カルボキシメチルセルロース(CMC)」と「ポリソルベート80(PS80)」。
このうちPS80は一時発がん性が問題になったが、FDAが1%までなら許容できると認可している。CMCに至っては安全性自体を問題にする必要がないとされてきた。
このグループは、乳化剤が細胞ではなく、腸の内側を守っている粘液層を破壊する可能性について調べた。
■粘液の層の破壊で変化が
すると予想通り、食品添加に許されている程度のCMC、PS80を飲ませたマウスでは、普通なら30μm(μは100万分の1)程度、粘液によって離れ た場所に隔離されている腸内細菌が10μm近くに多く存在し、粘液の中に多く住めるようになっている。すなわち、粘液によって腸を保護していた作用が破壊 されている。
腸炎を起こしやすい遺伝子の変化を持つネズミでは腸炎を早く起こすようになった。腸の長さは2割も短くなる。
さらに、いわゆる「メタボリックシンドローム」と呼ばれる状態になる。正常と比べると体重は増え、過食傾向が出る。大変なことだ。
■腸内細菌がいてはじめて影響
最後に、この効果について、乳化剤が直接粘液に作用して破壊するのか調べている。
腸内細菌が全くいないネズミに乳化剤を飲ませて調べたところ、粘液が全く破壊されていなかった。乳化剤の効果というのは直接的に粘液を壊しているのではなく、腸内細菌に働きかけた結果として間接的に起こっていると明らかにしているのである。
腸内細菌の存在しないネズミでも腸の中に新たに腸内細菌叢を移植した途端、粘液の層が破壊されてくる。さらに、乳化剤だけを食べるといった方法ではなく、人間の食生活に合わせて乳化剤を普通の食品から取るような形にしても問題は起こっていた。
最後にディスカッションで、「20世紀の中盤からクローン病や潰瘍性大腸炎といった腸炎やメタボリックシンドロームが増えた一つの要因は、乳化剤を食品に添加するようになったからではないか」と結論している。
これは大変な警告だ。
■どちらが最終勝者
たばこと同じで、因果関係を人間で証明していくのは時間がかかる。ただ、その気になれば、人で本当に問題が起こるかを調べることは可能ではないかと思 う。人工甘味料や、今回の乳化剤の危険性を警告する研究は、「自分の体は一つのゲノムを共有する自らの細胞だけからできている」という思い込みに対する警 告でもある。腸内細菌叢も体の一部だということが明らかになってきた。
今、私たちは謙虚かつ真剣にこの警告を受け止めることが必要だ。
警告を掲載したネイチャー誌は「社会派」とも見えたのだが、こうした印象を持った私自身が間違っているのだろう。警告するのが正常と考えるようになっている。
今、20世紀の遺産にしがみつこうとする勢力と、21世紀を見始めた勢力の戦いが始まっているように思う。ただ、どちらが最終勝者になるかは明らかだ。勝者に賭ける方が得すること間違いない。