あ~ちゃんが 見た詩 | 筆とBlack ink

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「ぼくさえ 生まれてこなかったら」


ごめんなさいね おかあさん
ごめんなさいね おかあさん
ぼくが生まれて ごめんなさい
ぼくを背負う かあさんの
細いうなじに ぼくはいう
.
..

ぼくさえ 生まれなかったら
かあさんの しらがもなかったろうね
大きくなった このぼくを
背負って歩く かなしさも
「かたわな子だね」とふりかえる
つめたい視線に 泣くことも
ぼくさえ 生まれなかったら

ありがとう おかあさん
ありがとう おかあさん
おかあさんが いるかぎり
ぼくは生きていくのです
脳性マヒを 生きていく
やさしさこそが 大切で
悲しさこそが 美しい
そんな 人の生き方を
教えてくれた おかあさん
おかあさん
あなたがそこに いるかぎり

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この詩は、いまから27年前、
15歳で亡くなった山田康文くん――
やっちゃんが作った詩です。
重度の脳性マヒで、全身が不自由、口も利けないやっちゃんが、
いのちのたけを託して作った詩です。


「この詩を受けて母が返事を出します。」

わたしの息子よ ゆるしてね
わたしのむすこよ ゆるしてね
このかあさんを ゆるしておくれ
お前が 脳性マヒと知ったとき
ああごめんなさいと 泣きました
いっぱいいっぱい 泣きました
いつまでたっても 歩けない
お前を背負って歩くとき
肩にくいこむ重さより
「歩きたかろうね」と 母心
“重くはない”と聞いている
あなたの心が せつなくて
 
私の息子よ ありがとう
ありがとう 息子よ
あなたのすがたを見守って
お母さんは 生きていく
悲しいまでの がんばりと
人をいたわるほほえみの
その笑顔で 生きている
脳性マヒの わが息子
そこに あなたがいるかぎり

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このお母さんの心を受け止めるようにしてやっちゃんは、
後半の詩づくりにまた挑んだのです。

「やっちゃんによる後半の詩」
ありがとう、おかあさん。
ありがとう、おかあさん。
おかあさんがいる限り生きていくのです。
脳性麻痺を生きていく。
優しさこそが大切で、悲しさこそが美しい。
そんな人の生き方を教えてくれたおかあさん。
おかあさん、あなたがそこにいる限り。


向野幾世(奈良大学講師)『致知』2002年9月号より







あ~ちゃんが 見た詩



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そんなこと どうでもいいとさえ思わせる




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