大河ドラマ「八重の桜」視聴率予測 | 西陣に住んでます

大河ドラマ「八重の桜」視聴率予測

西陣に住んでます-八重の桜




NHK大河ドラマ視聴率

どんなドラマが日本人に受け入れられるのかという知的好奇心から

なんとなく気になるところです。


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昨年の「平清盛」は史上最低の平均視聴率の12%でした。

もちろんドラマの面白さと視聴率とは必ずしも結び付かないかと思いますが、

日本人の嗜好を推察するうえでとっても参考になるかと思います。


そこで、今年も[昨年] 同様、統計手法を用いて

その視聴率形成の現象メカニズムにおける因果の法則性分析し、

今年の大河ドラマ「八重の桜」の視聴率を予測したいと思います。


用いる統計手法は、例えば「平安時代」「幕末」「男」「女」など

数量ではないカテゴリカルな変数(質的データ)から

視聴率と言う数量(量的データ)を予測することができる

数量化理論Ⅰ類を用いることにします。


さて、最初に結論を言ってしまいますと(笑)

今年の分析においては、昨年よりも変数を増やして

さらに予測精度を高めることに成功しました。


予測にあたっては、過去51回の視聴率データから

ドラマの時代などの各ファクターが視聴率に及ぼす影響を統計学的に求め、
その結果を基に視聴率を予測します。


まず各ファクターが視聴率に及ぼす影響を統計学的に求めるにあたっては、
視聴率に関連しそうな観点を挙げるともに、
その観点に属するファクターを挙げておく必要があります。
数量化理論では、

この観点を「アイテム」、ファクターを「カテゴリー」と呼びます。
今回の分析で設定したアイテムとカテゴリー(カッコ内)は次の通りです。


(1) 時代(平安/鎌倉/室町/戦国/江戸/幕末/近代)
  時代をまたぐ作品については、主要な時代を割り当てました。

(2) 主人公の身分(天下人/キーパーソン/庶民)
  日本の実質的最高権力者となった人物またはその配偶者を「天下人」、
  天下人を経験しない政治家・軍指導者を「キーパーソン」、
  政治家・軍指導者以外の人物を「庶民」としました。

(3) 主人公の性別(男/女)
  主人公以外に夫婦が主演の場合には「女」としました。

(4) 主人公の死因(殺害/床死)
  戦死、暗殺、斬首、自害の場合に「殺害」としました。

(5) 主演俳優の大河ドラマ経験(初演/再演)
  一度、NHK大河ドラマを経験した俳優が再び主演級を演じる時、
  「再演」としました。

(6) 主人公の運命・境遇(時代に翻弄/他)
  このアイテムは新たに設定したものです。

  実在の主人公が、その意思に関わらず強制的に苦労を強いられるような
  境遇におかれる場合、時代に「翻弄」されたと判断しました。

(7) 放映期(平常期/高度成長期/バブル期/不況期/地デジ期)
  GNP世界2位となった1968からオイルショック前年の1972を「高度成長期」
  日本が栄華を極めたバブル絶頂期の1986年から1988年を「バブル期」
  バブル崩壊による不況が顕在化した1994年以降を「不況期」、

  2011年以降を「地デジ期」としました。「地デジ期」は新設カテゴリーです。


このように各アイテムをカテゴリー区分して
過去51作品に対して適用した結果が↓この表です。


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このデータをパッケージソフトウェアに入力し、解析を行いました。
用いたソフトウェアは誰もがダウンロードして無償で利用することができる
オープンソースのプログラミング言語[R] です。
数量化理論I類については、
群馬大学青木繁伸先生[プログラム] を提供されているので
これを利用しました。


上記のようなカテゴリー区分を用いることで
極めて精度の高い分析を行うことができました。
分析の結果は↓この表のとおりです。


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各カテゴリー(ファクター)が視聴率に及ぼす影響については
カテゴリースコアの値によって知ることができます。
「定数項」の欄に示されている視聴率23.07%を基本値として
カテゴリースコアの「マイナス」欄に数字が入っているカテゴリーは
その数値だけ視聴率を下げる影響があり、
逆に「プラス」欄に数字が入っているカテゴリーは
その数値だけ視聴率を上げる影響があります。
また、偏相関t値が大きいアイテム(観点)は

視聴率に対する影響度合いが大きいアイテムと言えます。

ここで、各アイテムごとに分けて説明をしたいと考えます。


(1) 時代
「江戸」「戦国」は視聴率を上げる作用があります。
一方、他の時代は視聴率を下げる作用があります。


(2) 主人公の身分
「天下人」が最高のプラス要因、
「庶民」が最低のマイナス要因になっています。
大河ドラマで1年間観るからには最後に天下人になってほしいという
ハッピーエンド願望があるのではと思います。
また庶民は歴史のメインストリームに乗らないので、
歴史物を期待する大河ドラマの主役には向いてないのではと思います。


(3) 主人公の性別
「男」がプラス要因「女」がマイナス要因であることがわかります。
ただし、カテゴリースコアの値や偏相関とt値は
他のアイテムと比べて非常に小さく
視聴者があまり重要視していないことがわかります。


(4) 主人公の死因
主人公が運命の巡り合わせによって「殺害」される場合、
マイナス要因になることがわかります。
これも視聴者のハッピーエンド願望によるものと考えられます。
「時代」や「主人公の身分」に比べれば影響度合はやや低いものの
けっして少なくない影響度合を示しています。

(5) 主演俳優の大河ドラマ経験
主人公が「再演」する場合、マイナス要因であることがわかります。
NHKとしては過去の実績で優良俳優を再起用するのでしょうけど、
視聴者としてみれば「1年間観たあの人がまた・・・」
という感覚やビミョ~な違和感をもつのではと思います。


(6) 主人公の運命・境遇
主人公(実在の人物に限ります)が時代に「翻弄」される場合、

プラス要因であることがわかります。
やはり、日本人は、不運にも時代に翻弄されてしまうような

ドラマのシチュエーションが好きなようです。


(7) 放映期
「バブル期」には視聴率が高く、
「不況期」には視聴率が低いという結果が得られました。
また「高度成長期」にも視聴率が低いという結果になっています。
これは単に経済との関係なのか、時代の風潮に関係するのか
についてははっきりしませんが、
「高度成長期」や「不況」の時には、
大河ドラマなど悠長に観ていられないということかと思います。

そして、「地デジ」となって、その傾向はさらに大きくなったようです。

番組表がテレビに標準装備されて録画も容易になると

リアルタイムで観る必要もなくなりますね。
いずれにしても、このアイテムは偏相関とt値は最も高く、
大河ドラマの視聴率が時代に反映されていることがわかります。


さて、今回の分析結果が高い精度であることを証明するものが下表です。
この表では、今回得られたカテゴリースコアを

実際のデータに適用させた予測結果と実測結果を比較しています。


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この表を基に予測視聴率と実測視聴率の関係をプロットすると
↓この図のようになります。


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回帰式は見事にy=xに一致し、その決定係数は0.9074
その平方根である相関係数は0.95を上回ります。
このことから、予測と実測が極めてよく一致していて
今回の分析によって得られたカテゴリースコアの値が
NHK大河ドラマの視聴率の予測に非常に有効であることがわかります。


というわけで、得られたカテゴリースコアを用いて
2013年NHK大河ドラマ「八重の桜」の視聴率を予測してみたいと思います。


「八重の桜」の場合、
時代は幕末、主人公はキーパーソンの女子で他者から殺害されません。
また、主演の綾瀬さんは初演、時代は地デジです。
この場合予測視聴率は次式によって求められます。


-1.40%+0.8%-1.10%+1.47%+0.68%+3.17%-11.58%+23.07%=15.12%


つまり、予測視聴率(平均)は15.12%となります。

そして95%の確率11.65~18.59%の間におさまるという結果です。


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なお、ばらつきが大きいので何とも言えませんが、

初回視聴率から平均視聴率を推定することもできます。


「八重の桜」の初回視聴率は21.40%でしたが、

過去の実績から見ると・・・


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平均視聴率は平均して初回視聴率の0.8863倍なので

21.40%×0.8863=18.97%

と言うことになります。


いずれにしても興味深く見守りたいと思います。

実際の現象(realization)は必ずしも統計(statistics)どおりには

いかないですからね~(笑)