休みになると季節が良ければ、時折近所の山に登る。半年ほど前に展望台に行った際のことだ。丁度その時は天気も良くて大阪平野の眺めも良く、清々しい風にあたっていたんだが、いきなり見知らぬおじさんがやってきて、無線機を取り出し、巨大なアンテナを伸ばし始め通信を始めた。元来アマチュア無線には興味はあったが、間近で見るのは初めてだ。確かに日本語で話をしているのだが、特殊用語満載で何を言っているのか分からない。次々と遠方の相手と通信していく様をしばらく見ていた。益々私はこのアマチュア無線に興味を持ったが、なにより通信しているおじさんがとても楽しそうにしていたのに関心を持った。そんなに楽しいものなのか。今時、インターネットもあるし、アマチュア無線ってどうなんだろうと思ってしまうが、実際このように楽しそうに会話しているおじさんを見ていると、やってみないと面白さなんて分からないな。こういうのもアリかなと思った。
下山しながらそのように考え、一つ私もチャレンジしてみるかと思い立った。アマチュア無線をやるには、まず免許を取らなくてはいけない。れっきとした国家資格が必要なのだ。
最短で楽に取る方法を考えた結果、講習会で免許を取るのがいいと思い早速ジャールに申し込んだ。ジャール(JARL)というのは、日本国内でアマチュア無線界隈を仕切っている組織で、この組織を通らないとアマチュア無線はできない事になっている。そして息子も巻き込んで講習会経由で免許を取ることになった。実際に無線機を触れるまでにはいくつかの関門があって、まず免許をとってから、無線機を購入し、次に総務省に買った無線機で無線をやるよと申請しなければいけない。その申請が下りてから、やっと無線機に通電できるといった感じ。
先日、ついに無線機に通電が出来て、これだけでうれしい。長かった。やろうと思ってから5カ月も経過している。
とはいうものの肝心の無線の通信の仕方もよく分からないし無線機の使い方も分からない。だから当面は聞くだけであるが、それはそれで楽しい。
さて新参者の私が見た所、現在のアマチュア無線の世界では2つの組織が縄張り争いをしている。それは八重洲とアイコムだ。恐らくベテランのアマチュア無線家はその双方使っているかとは思うが、私のような新参者にとっては、入口でどちらの陣営に入るかを決めるのは重要な事だ。免許が下りてくる間、かなり期間があったので、そのあたりを調べてみた。ここで言っている縄張り争いとはデジタル無線の事を言っている。ここ数年でアマチュア無線の世界も様変わりしたようで、已然として従来のアナログでの無線方式は王道だと思うが、世の中はデジタルへとすべてが移行しつつあり、アマチュア無線の世界だって例外ではなく、2つの方式が対峙している。
八重洲のワイヤードというシステムは非常にフレンドリーなシステムで愛好者が多く、アイコムのD-STARというシステムはジャールが推している事もあり、業界標準と言っていいと思う。自由度という点ではワイヤードに軍配が上がるようで、そういう点で甲乙つけがたいような雰囲気だ。
私も悩んだが、いつも登っている山に素晴らしいアンテナが立っているという事で、最終的にはアイコム陣営からの出発とする事にした。そのアンテナというのが生駒山430というアンテナだ。
子供の頃から見慣れたアンテナであるが、改めて知ると、これが実は偉大なアンテナ局なんだと感心した訳である。このアンテナの所有者はNTTであるが、アイコム社がNTTから借りる形でアンテナを建てた。どこかのHPにその経緯が書いてある。その経緯を知って私は感動してしまった訳だ。
アイコム社の事であるが、この会社は私は半年前までは知らなかったのであるが、すごい会社だ。売上の大半は海外であり、D-STARのシステムも日本国内よりも海外の方が大きく普及している。しかも本社が大阪の平野というではないか。大阪人である私も応援せざるを得ないのである。
なんでもそうだが、気になる事があると、ネットで調べることができる範囲で、とことん調べたくなるが私の流儀である。このアイコム社に関して調べていくと、気になるお店があった。それは大阪日本橋で無線機を販売しているデジハムサポートというお店だ。
大阪日本橋の通称オタロードにひっそりと店を構えるこのお店は、アイコムの商品を専門に販売サポートしているようだけれど、より深く調べると、なんとアイコム社の株式を10%近くも所有する大株主ではないか。しかも決算書を公開していて、借金ナシの大金持ち会社である。今時アマチュア無線の店ってどうなんかね、なんて最初思っていたが内情知らない自分に恥ずかしさを覚えたよ。
そんな感じで私の無線ライフは始まった。