「毎日世界が生きづらい」宮西真冬(講談社文庫)

 


毎日世界が生きづらい、と感じながら

不器用でも必死に生きている主人公(美景)とその夫(雄大)

たぶん、雄大も生きづらさを感じている人間の1人だ

 

 

得手不得手は誰にでもあるし

出来ることもあれば、出来ないこともある、それは当然

人は千差万別、歩く速度も違うし、見えている景色も違う

 

それはわかっていても

実際にはあちこちでさまざまに誤解や軋轢が生まれてしまう

 

最近では発達障害という言葉を耳にすることも増えてきた

そういう診断を受けることで本人も周囲も

その人が置かれている状況が理解できるようになるのであれば

少しは生きづらさが軽減されるだろうか、とそんなことを思いつつ

 

 

実はこのお話を読みながら

読み続けるのがなんとなく苦痛だったりもしたのです

 

美景の生きづらさ

雄大の生きづらさ

 

お互いがお互いのことを思いやりながら

その思いやりがかえって行き違いを生んでしまったり

 

彼らが感じている世間や自分自身への違和感にうっかり共感してしまうと

ちょっと息苦しくなるのです

 

 

でもお話の終盤

やっぱりちょっとした気持ちの行き違いで大喧嘩になったあと

お互いに頭を冷やしたそのあとで

雄大が美景に言うのです

 

「空っぽになった本棚を欲しい本で埋めなさい。

 簡単に引っ越しできないように」ーーと

 

ここで、もう、なんか「うわ~ん」と泣けてきました

ーーうわー、雄大!なんていいヤツ!

ーー美景ー、こんな人なかなかいないよー!

と思わずガッツポーズ?いやコブシを握りしめておりました

 

きっとこの言葉は美景の心にも刺さったはず

(ワタシには刺さった、いやワタシに刺さっても仕方ないけどw)

 

雄大が折に触れて美景に伝え続けてきたこと

ーーあなたは、いてくれるだけでいいんだよ、と

ーー自分には、あなたが必要なんだよ、と

 

美景はようやくそれを自分の中に落とし込んで理解できたのです

ーー自分は雄大のそばにいていいのだ、と

 

 

伝わるまで何度でもあきらめずに伝え続けた雄大の勝ちですね

美景もそこから、少しでも自分を肯定して自分を信じることができれば・・

そうなれば、もう少し世界は生きやすくなるはず

そうなれば、いいなあ、と

 

 

この1冊を読むと

ちょっとしたカウンセリングを受けた気分になるかもしれません

 

 

 

 

(ほぼ)6月の本箱