第12話はこちら


「京二―!何―?」


大きな声で聞いてみる。


爆音はまだ止まらない。


このあとが寂しさに包まれるからか、最後だけは華やかに。


京二が花火を背にして大きな声でこう言った。



「俺はー!初めてここで音々湖ちゃんを好きだって思ったー!!!」



音々湖が京二の作った影にすっぽりと収まる形で黙り込む。


緊張が解けたのに、何もない夜のはずだったのに、これじゃキラーパスじゃないか!


彼女が黙ってしまうというシチュエーションを予測していたのか、彼は花火が終わらないうちにこう言った。



「だーかーらー!結婚してくださーい!!」


目の前に出された小さな指輪。


お世辞にも高そうとは言えない。


というか祭りの露店で買ったというのが見え見え。


大きく赤く光る子どもの宝石はちょうど最後に打ちあがった花火の色と一緒だった。



こうなったら悩む暇なんてなかった。


気を抜いた瞬間のキラーパス。


春太郎の差し金かとも思った。


花火が終わって、明かりが一層暗くなる。


そんな中でもわかるくらい、京二は一生懸命な、真っ赤な顔をしていた。


それを見たときには、もう答えは決まっていた。




彼女は左手を彼の前にゆっくりと差し出した。


~Fin.~


ヘタレ作品過ぎて公開をためらいました。


第11話はこちら


「音々湖ちゃんとの想い出を振り返ることにした!」


「はぁ?


彼女は口をあんぐり開ける。緊張を返せ。


「つまり、俺が音々湖ちゃんと過ごした中で初めて覚えてるのは家のシーンってことさ☆春の家に行ったときに俺が壁に激突しておでこをけがしたら音々湖ちゃんが手当てしてくれてさ。あー・・・で、それから2年後の夏にも同じとこ強打したんだけどそのときも助けてもらったんだよね。それから、学校の宿題は毎年手伝ってもらってたし、あとは家族でどっかいくときは必ず俺も誘ってくれたし。んでそうこうしてるうちに虎次郎が生まれて生まれた瞬間俺たちはマブダチになってー・・・えーと・・・それから・・・」


ひたすら思い出話を語り続ける京二。


緊張どころかおかしいだけである。


しかもその想い出の大体がくだらない。


けれど大切な日常。


なんだか色々考えてた自分自身が可笑しくなって音々湖は笑い出してしまう。


結局夕方無駄に緊張してしまったのだ。


「えっ!何なに音々湖ちゃん!なんか可笑しかった?」


「ううん、別にー」


花火も終盤に入り、最後の狂乱振りを見せ付ける。


観衆も一段と沸きに沸いて、ほんのりアルコールのにおいまでする。


「なんか色々あったね、わたしたち」


18年間は音々湖にとっても短いものではない。だからこそしみじみと言ってみた。


「うん。色々あったさぁ」


「海行ったりしたね」


「喜三郎が溺れたんだよねー」


「週に2回はうちにご飯食べに来てたし」


「音々湖ちゃんだって週に2回はうち来てたじゃん」


「学校も全部一緒だしね」


「てかこの近くうちの学校しか高校ないよね」


「田舎だなぁ」


「いなかだねぇ~」


「ここもさ、春ちゃんと京二が迷子になって見つけた場所だったよね?」


「うん。そうそう、俺ここでさ!」


その時。


最後の花火が打ちあがる。誰が考えたのか、巨大な花火。



1発ではなく小さな花火の群たちと一緒に何発も何発も上がっていく。


一応上のほうは見ていたけれど話に夢中だった彼女は不意に鳴る大きな音にびっくりする。


ふと隣の彼を見ると彼は口を動かしている。何か喋っているんだ。



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第10話はこちら


2人は地元住民の中でもごく限られた人々しか知らないベストスポットへ行った。



10年以上前、迷子になった春太郎と京二が見つけ出した場所だ。


ここからなら、海上で打ち上げられる花火を迫力あるまま、けれど人ごみでないという好条件で見られるのだ。


周囲は静寂に満ち満ちて、さらに彼女の居場所がなくなっていくようだった。


そんな中でも京二はひたすらバカ話をしているようだったが彼女の耳には全く入らない。


8時半を過ぎると花火がうちあがり始める。


それを見計らったように京二がふと咳払いをする。


音々湖は右側にいる京二があの時みたいに、急に大人になってしまったような感じがして、動揺せざるを得なかった。


辺りは暗闇。一発目の緑の大輪が空と海に浮かび、歓声が遠くに聞こえる。


二人の距離はいつもと同じ・・・はず。


心なしか、いや、夜のせいなのか、なんだか知らないが近いような気もする。


「俺、今年で音々湖ちゃんと会って18周年なんだ」


京二は突然奇怪な発言をし始めた。彼女にとっても予想もつかない話が突然振られたのだ。


それに彼女は少し緊張を解いて笑って返す。


「当たり前でしょ?京二が生まれたときから見てるんだから」


「うん。まぁ、で、それで・・・」


京二が口ごもる。


音々湖にとって聞きたいような聞きたくないような言葉。


微妙なバランスを崩すかもしれない言葉。


「俺・・・」


花火と花火の間で、やけに周りがシンとする。虫の声も、あまりない。



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