その観察が始まったのは9月に入り、学生達の夏休みが終わり学校が始まってすぐの頃だったと思う。私はこれまでと異なり、学生達で混雑している中央付近の車両を避け、東京行きの先頭に近い車両、13号車に乗車するようになっていた。

その若者(A君と呼ぼう)の行動は私から見て明らかに異常だった。しかしこれが不特定の人々が行き交う電車の中、偶々目にしたのなら、異常とは思わないことだろう。つまりカップルだと思えば全く違和感がない行動なのだが、これがカップルでないことを知っている人間から見ると異常なのである。これは私の乗る車両が毎日同じで、またそこに乗車してくる人間も毎日同じような顔と分かるからこそである。事実私以外に、少なくとももう一人それに気づいている人間がいる。

さて勿体ぶらせてしまったがその異常な光景とは、カップルでも友達でもなんでもない電車の隣あった男女が、重なり合うように眠っているものだ。しかも女の子(いつもNE.NETのトートバッグを持っている。B子さんとしよう)は恐らく全く気がついていないと思うが、A君の方は眠りこけたB子さんの後頭部に口が付くくらいに不自然に真横を向き、船を漕いで寝た振りをしているのである。

そしてA君は毎日のように彼女の隣に座ろうとしているのである。そのために東海道線の駅を5駅くらい遡って乗ってくる。それはおそらくあまりに空きすぎた車内で隣に座るのも不自然だし、適度な混雑の車内が隣に座りたい彼にとっては好都合なのだろう。

ところがある日思わぬことが起きた...それはその私以外にそれに気づいているおじさんによるものだった。(明日に続く)