「いのちは引き継がれていく」
『カワセミのマルタン』 リダ 文 ロジャンコフスキー 絵 福音館書店
を読んでそう思いました。
年とった二本のもみのきのあいだから、いずみがわき出しています。
この小川に、カワセミのマルタンとマルチーズは住んでいました。
苔やヤナギやカゲロウたちと共生していました。
水辺の土手に深い穴をほり子どもたちを育てました。
幸せな6年でした。
ある朝、わたしは、マルタンが小川の土手に横たわっているのをみつけました。
マルタンはもう動きません。
一羽が死ねば、あとの一羽は生きていかれないというほど、カワセミたちの愛情は、ふかく、、つよいのです。
のこった一羽は、ただひとりきりになり、とぶことも、たべることもしないで、とうとう、その心ぞうは、止まってしまうのです。
その次の春・・・
いなびかりのように、青いつばさの二羽の小鳥が、みずとすれすれに、橋の下をくぐってとんでいって、枝の上にとまりました。
マルタンとマルチーヌ子どもたちが生まれ故郷にかえってきたのでしょうか?
それは、そうかわかりません。
わたしには、なにもわかりません。
それでもわたしは、うれしくおもいました。いのちは、たえずうけつがれて、つづいていくとわかったからです。
わたしの小川は、やがて、大きな河に流れ込み、その川は、また海にのみこまれてしまいます。でも、わたしの小川には、いつも流れる水があります。