https://www.nhk.jp/p/nichibi/ts/3PGYQN55NP/episode/te/K181LMR19Q/
今夜8時からNHK Eテレ 日曜美術館で
『無言館』が再放送されます。ぜひご覧ください。
昨年の又三郎の旅のブログも再録させていただきます。
****************************************************************************************************
口をつぐめ、眸(め)をあけよ 見えぬものを見、 きこえぬ声を聞くために
無言館案内より
知ってはいましたが、実はここへ来たのは初めてでした。
戦没画学生慰霊美術館
『無言館』
戦没美学生の絵画を主に手紙などの遺品を保存展示する美術館です。
北陸新幹線の上田駅(真田信繁〔幸村〕で有名ですね。)で、上田電鉄別所線に乗り換え、塩田町駅で降ります。(上田駅別所線の窓口で『別所線・信州の鎌倉シャトルバス セット乗車券1130円』を買うと、別所温泉まで行けます。お得です。行かなくても少し安くなります。)
4月から11月までは、シャトルバスが接続しているので、それに乗り、やっとたどり着くことができます。
この地は塩田平と呼ばれる千曲川左岸の河岸段丘の平地です。北条義政から3代続く上田北条氏が支配していた土地なので、『信州の鎌倉』と呼ばれているそうです。鎌倉時代から室町時代の古刹(国宝や重文)があり、その周辺はハイキングコースとしても人気があります。近くには別所温泉があります。その北面「前山」という地に、美術館はあります。バスを降りてからもさらに斜面を上がります。
登っていくと眺めのいい公園がありました。
三兄弟たちが迎えてくれました。
「初めて」と書きました。「知ってはいました。」とも書きました。
なぜ、初めてなのか?
3つの理由があります。
① 「いつでも行くことができる」
東京の美術館で行われる「企画展」は、「本邦初公開」「日本で〇点も同時に公開されることはない。」「30年ぶり」・・・などのキャッチコピーで呼び込みます。
美術初心者の又三郎は、その宣伝にすぐにつかまります。
ましてや、「世界的名画」です。「日本にある美術館はいつでもいくことができる。」
② 「偏見」
「太平洋戦争の真っただ中で、美学生であり、高価な絵具や画材を手に入れることができたのは、(戦地でも描いた。)恵まれた家の子息だ。戦争で亡くなった兵士の多くは、そんなこととは無縁の人たち(特に東北などの貧しい農民の兵士たち)ばかりであったから特別扱いするのはおかしい。」
という思いがいつもありました。
③ 「館主である、窪島誠一郎に対する誤解」
窪島誠一郎氏は、戦争の混乱期に養父母に預けられました。戦後、実父母を探し当て、実父が作家の水上勉であったことから、週刊誌がセンセーショナルに取り上げていた記憶がありました。
(実父母への、冷淡な感情や水上氏との心の確執があったことは、窪島氏も著書で正直に書いています。)
そのゆがんだ残像が、話したこともない有名人への誤解したイメージを作り出していました。
(この偏見は、だいぶ前に、窪島氏が私財を投じた蒐集活動をしていることや氏の書いたものを読んでから、全く無くなったのですが。)
ここ数年、何度か無言館への旅を計画したことがありました。
しかし、信州へ出かけるのならば、大好きな安曇野にしよう。と、しばしば、計画が変わり今回に至りました。
(大人の休日俱楽部パスを使っての金のかからない旅です。)
「今度こそ」と思った最大の原因は、文芸誌『民主文学』に窪島氏のエッセイが連載され、その中で、『信濃デッサン館』が閉館になったことを知ったからです。
『信濃デッサン館』は、やはり、窪島氏の私設美術館で、又三郎の大好きな、松本竣介、村山槐多、小熊秀雄、立原道造(みな詩人でもあり、文美両道?の天才です。)などの夭折した人の作品を展示していました。
『無言館』も来館者が減っており、その経営に集中するためと書いてありました。
大変なショックでした。「いつでも、会えることができる」なんてことはないのだ。人との出会いと同じなのだ。と、思いました。(窪島氏による300点以上の作品の寄贈と、長野県による一部絵画の購入により、2021年改修開館予定の『長野県信濃美術館』で展示されるようですが、どのような形で展示がされるのかよくわかりません。(たぶん、善光寺の裏にある美術館だと思いますがロケーションはあまり良くない印象です。長野県さん、素晴らしい美術館にしてください。お願いします。)
塩田平に臨む、この地で見たかったと、とても後悔しています。
この記事を「教会」のテーマに入れたのは、平和への祈りの場所だと思ったからです。
****************************************************************************************************
NHKの日曜美術館で、司会の小野正嗣(作家)が訪問しました。
『無言館』を見た小野が「まるで教会のようです。」と言った言葉や
館内を歩く小野が、たびたびため息をついていたことなど
又三郎の初印象と全く同じでした。あの日が再現されたようでした。