私が作曲を始めた1年後くらいに

 

20歳の演歌歌手・・・外見はポップス系

 

彼女の事務所からの依頼で、

今までとは違う、彼女の魂を感じるような

曲を作ってくれないかと・・・

 

 

早速契約スタジオで歌ってもらう・・・

 

上手い・・・

 

 

演歌なのだけれど、

ブルースを聞いているような

心の叫びが私の心に響いてくる・・・

 

本当に上手い・・・

 

 

歌い終わった後に

私から、

 

彼女の為に作りたいですね・・・

 

事務所も本人も大喜び

 

 

詞は、彼女に書いてもらう事にして、

それに、曲を付けると言う事で決まり

 

それから1か月後・・・

彼女の詞が出来た

 

 

男との逢瀬を

その詞によって

寂しさ、辛さ、悲しさ、切なさ・・・

そして・・・

想い

 

男と女の、愛し合う葛藤の姿が

この詞によって感じとれる・・・

 

愛する事が、幸せや悦びではなく

 

愛する事は、

辛く悲しく、寂しさだけがつのる

切ない思いが綴られている・・・

 

彼女にとっての人を愛すると言う事は、

愛すれば愛するほどに切なく苦しいものと・・・

 

詞を何回も何回も読み返し、

読み返すほどに辛くなる・・・

 

未だ、20歳の子が・・・

男と女のどん底まで知っている・・・

どうしたのだろうと・・・

 

 

 

詞は、譜割りに合うように少し手直しして

作曲にかかる・・・

 

詞のイメージからして、

必然的にマイナーの曲になり

最初はボサノバ調のメロにしてみたが

 

ボサノバ系はヒットしないと言うジンクスが有り

詞は他の作詞家の詞で、

これはB面にする事にして

 

 

彼女の詞は、

3連のリズムでの、曲にした

 

詞の切なさが曲に合い

 

とても良い出来上がりとなった

 

 

いよいよレコーディング

 

ガラス越しに

彼女がヘッドホーンをし、

OKサインを出す・・・

 

オケ(カラオケ)を流し、彼女、歌いだす・・・

 

 

旋律が、詞によってドラマを作り出し、

彼女の声が、脳裏を駆け巡り

まるで心が張り裂けるような映画を見ているような・・・

 

とても良い・・・

 

16小節が終わり、

サビに入る・・・

 

一番盛り上がる所・・・

 

彼女・・・

大粒の涙が流れる

 

声が震え

歌えなくなる・・・

 

NG

 

何回もサビの所で

同じになる

 

 

彼女の人生の生きざまが

歌を止めてしまう・・・

 

何故か、私まで涙が止まらなくなる・・・ ・・・

 

 

何回もNG

 

 

結局・・・取り止めとなった

 

 

彼女の生きざまの詞と、

私が、その詞に感銘を受け

心の底から作った曲・・・

 

没にしたくはない!…と、彼女が言う

 

 

何時か彼女に本当の幸せが来た時に

歌ってもらう事として・・・

その曲は、それまで私が預かっておくからと…

彼女と熱い約束・・・

 

そして…

その日が必ず来ると信じて私は待つことにした

 

 

何時か・・・いつか・・・ ・・・

 

 

 

 

『今日、5年間会いたいと思い続けた方に会えました。

でも、今度はもういつ会えるかわからない、そんな人です。

別れのとき、泣くまいと思ってたけど、ひとすじの涙がこぼれました。

ひとすじの涙は、いつか『ひとすじの光』に変わるのだろうか・・・』

 

20歳の時に貰った曲を今、とても歌いたい…

でも…歌手には二度と戻れない所まで来てしまった…

それでも『ひとすじの光』に変わる事

を最後まで望んでいた・・・

 

光にならず、涙も枯れて、生きる事に疲れてしまった孤独な死・・・だった

 

2019年3月7日 永眠

 

 

 

何時か・・・と思っていた事が

永遠になってしまった・・・

 

 

人は出会う人によって良くも悪くもなってしまう・・・

私から見た彼女の20年間の人生は、とても壮絶で

人を愛する事の辛さも含め、毎日が生きるという事の葛藤だったのではないか…

と思う・・・

 

しかし、彼女の人生が良かったのか悪かったのか

それは、彼女自身しか知る由もない・・・

 

 

今度生まれて来る時には、

自分が、沢山笑顔になれる

幸せ一杯の人生が有る、星の下に生まれておいで・・・

 

 

 

 

 

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