2024/05/30

今井むつみ他「言語の本質」。副題は「言葉はどう生まれ、進化したか」。本書のキーワードは「オノマトペ」。「もぐもぐ」とか「さらさら」といった、いわゆる擬態語のことである。このオノマトペの考察を入り口に、なぜ人間は自分の身体の一部のように言葉を使いこなせるようになるのか、を解き明かしていく。読み進めるうちに、オノマトペと他の言語との関係が明らかになり、人間の言語学習のプロセスが見えてくる。言語学ミステリーような感じも受ける、稀有な書。評判が高いのも頷ける。

本書によれば「ギラギラ」とか「ポイする」とかのように、それが何を意味するがある程度は推察できる(本書ではそれを言葉のアイコン性と呼ぶ)オノマトペから、もっと抽象性が高く、言葉とその意味との関係が希薄となる一般語(例えば、輝きとか捨象とかのようにアイコン性が低い)の意味でも理解できるようになるのは、人間の「アブダクション推論」の力である。過去の経験などから、おそらくこうであろう、と仮説的に推論することを意味するアブダクションは、社会科学でも重要な考え方で、最近少し勉強していたところだった。思いがけずこの推論に話が繋がって、より一層、本書からの学びが増えた。

著者の英語学習の本の「英語独習法」は読んだことがあって、もとてもよい本だったし、この本の仕事も超一流。それが新書で読めるとか、最高である。

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先週末に学会での東京出張を終えて、休みなく今週に突入。明日朝の授業を終えれば、なんとか乗り切れそうである。やれやれ。とはいえ、学会の仕事も、学内の仕事も重要性が高く、プレッシャーがかかる。年齢も50代になって、私のキャリアも山場を迎えた感じであるニヤリ