2024/05/17

谷良一「M-1はじめました」。ビジネスのノンフィクションが好きである。大学での専門が経営学なので、この手の本を読むのは仕事でもあるのだけど、自分も企業活動を調査してビジネスケースを書いたりするので、とても親近感があるし、何より良書が多い。先日レビューした「ザ・ワン・デバイス」も力作で大いに勉強になった。

で、M-1である。この国民的行事をつくったプロデューサーが、第1回のM-1を開催するまでの奮闘を綴る。2001年、あの同時多発テロで世界中が震撼した年、漫才は低迷期で、それを何とかすべく持ち上がった企画がM-1だった。周囲の冷めた評価を覆して成功を遂げたキモは、初期の企画のコンセプトが最後までぶれなかったことだと感じる。谷氏が漫才のガチンコ勝負にこだわったこと。そして、そこには島田紳助という大きな精神的支柱が欠かせなかったと思う。世間がダメと評価する(だからこそ、誰もやらない)中から生まれるイノベーションのストーリーとして、とてもしっくりくる話だった。

ちょっと残念だったのは、23年も歴史があるんだから、そこまで射程を広げて欲しかったことと、もっと人に焦点を当てて欲しかったこと。中川家の礼二さんの話はもっと読みたかったし、そんなストーリーが満載の企画ではないのか。続編に期待したい。


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今日は朝から1年生向けの授業、昼からはやや気を遣うオンライン・ミーティングが1件。その後、三宮で大学同窓会の理事会。50ともなると、いろいろな仕事や会合に引っ張り回される。ぼちぼちやらないと、体力がもたないけど、仕事を断れない体質はそんなに急には変わらないしなぁ、と嘆息しながら帰途につく金曜日の夜。よい週末にしたい。