偶然街で再会したあの夜の男の子。
「お姉さん」なんて呼ばれるのは心外だけど、それでも許せるなんだか不思議な男の子。
弟みたいっていうのかちょっと意地悪したくなるようなタイプ。だけどやっぱり近くにくると短めの袖から見える腕なんて最近の男のにはまれな鍛え抜かれた逞しい腕。
なんて・・・そんな所が目につく私ってちょっと怖い?
そんな気持ちを悟られないようわざと名前を間違ってみる。ほんと面白い。
ヒョまで言うと凄く嬉しそうに笑ったのに違う名前を言うと一瞬にして変わる表情。
ごめんね。本当はちゃんと覚えてたのよあなたの名前。
あなたの名前はキム ヒョンジュン。
あーあ。生まれかわらないうちにまた会っちゃったね。ふふふ。
今日は新しい商品のPRのため数人の女の子と街でキャンペーンを行っていた。私はそんなキャンペーンなどの女の子を派遣するモデル事務所でディレクターをしている。
私の働く会社はモデルはもちろん営業兼ディレクターも女性がほとんどで、私は男性並みに毎日動き回る。
「おねえさん、お仕事でしょうか?」ヒョンジュンは誰がどう見ても仕事中の私にそんな事を聞く。
「ええ。あなたは?ここで何してるの。」
「日本・・・街見てます。」
「そうなんだ。ゆっくり楽しんで。じゃあ。」
「おねえさん・・・」
「あのね、前会った時にも言おうと思ってたんだけどおねえさんて何回も言われるのは・・・」
おねえさんで間違いはないけどね。
「ごめんなさい。おねえさん・・・違う、えっと。」
「おねえさんしか呼べないわよね。ごめん。」
名前も知らない年上の女の人、おねえさんって呼ぶしかないわよね。
「月曜日、次の月曜・・・」
ヒョンジュンがそう言いかけた時近づいてきた男性が私を怪訝な顔で見ながら会釈する。
「ヒョンジュンさん、そろそろ。」
「わかりました。おねえさん、月曜日に。」
また月曜日にってヒョンジュンが言いかけた時今度は私の名前が呼ばれる。
「中原さん、ちょっといいですか?」
はヒョンジュンに「ごめんなさい。また。」そう言って別れを告げた。
運命とは違うすごい偶然での再会。だけどきっとこんな偶然もう二度とない。そう思うとちょっとさみしい気持ちになる。
何も知らない異国のしかも年下の男の子。次こそ生まれ変わったら会えるかな。
「中原さん、さっきの人知り合いですか?」
「知り合いって言うのかな・・・」
「かっこいい方ですね。」
「かっこいいって言うよりかわいいじゃない?」
「えー、かっこいいですよ。中原さん、かわいいと思うって事は中原さんはもうおねえさんなんですね。」
若い女の子から見るとかっこいい、そう見える男の子が私には可愛く見えるってそれだけで現実を思い知る。
いい年していまだ独身のおねえさんか・・・。
今日は金曜日。
あの子が言った「月曜日」って言葉が何故か気になって3日間もやもやした日を過した。
そして結局曜日一人飲みに出かける事にした。