僕と君とお互いが交わした約束。
僕は約束を守ると誓って君と指きりをした。
交わした約束を守れた今、僕達に未来はあるのだろうか・・・。
「じゃあ・・・。」
「元気でね。」
「君も・・・。」
彼女と初めて会った時のことは今でもはっきりと憶えてる。
自分の生まれた場所を離れ知らないところでの生活が始まってまだ間もないころの事だった。そこでの生活に不安がなかったと言えば嘘になるかも知れないけれど、メンバーがいたからなのか、自分の志にむかって突き進んでいた時だったからなのか、想像していたより不安は感じなかった。
「今日は久しぶりの休みだからみんなでどこかに行こうか?」
メンバーはそう話しながらどこに行こうかとか、色々と話も盛り上がっていた。
「マンネも行くでしょ?」
「うん。あっでも今日はやめとく。ちょっとぼーっとしたいし。」
僕がそう言うとゲラゲラと笑いながらメンバーたちはいつもぼーっとしてるじゃないかとか好き勝手僕の後ろで話しているのが聞こえる。
めちゃくちゃ言うよな・・・。いつもって。
「じゃっ俺たち出掛けるから。」
そう言って俺以外みんな出掛けて行った。ぼーっとしたいって言ったけど、特にしたい事や行きたいところがあったわけじゃなかった。
ただ何となく、ただ何となく一人でいたいって思っただけ。
のんびりと支度を済ませ、ひとり住んでいる宿舎から太陽の光りが降り注ぐ空の下へと出る。僕は大きく背伸びをし大きく息をする。
さあ何をしようか。
外に出てみたもののすぐには思いつかなかった。だから何も考えず少し歩こうと思った。
スタジオへと続く道。
毎日と言っていいほど通る道なのにいつもと全く違って感じるのは何故なんだろう。
そんな事を思いながら歩いていると大きな交差点へとやってきた。信号待ちの人たちでごった返している少し後ろで僕も信号が青に変わるのを待つ。
信号が青に変わり人の波に押されるよう僕も交差点を進んで行く。横断歩道の真ん中あたりで一人の女性とサラリーマン風の男性がぶつかる。
「あっ」
思わず見ている僕が声を出してしまった。男性は、ぶつかり道に座り込む形になった女性に
「痛いな、気をつけろよ。」
そんな言葉を言い放ち前に進んで行く男性。女性はすいません、そう言って何かを探している様子だった。僕はなんだかほっとけなくて声をかけた。
「大丈夫ですか?」
そう言って手を差し出すと
「メガネを落としちゃったみたいで・・・。」
まわりをくるくる見渡すとその女性の足元にメガネが落ちていた。
「これですか?はい。」
そういって僕はメガネを拾い、その女性に手渡すと彼女はそれを受け取る。
「信号変わっちゃいます。早く。」
僕はまた手を差し出すと頭を下げながら僕の手を取る。点滅する信号に急がされるように僕達は手をつなぎ走る。
「すみませんでした。ありがとうございます。」
そう言いながらその女性は手に持っていたメガネをかける。そしてまた僕の方をみた。
「うそっ。」
彼女はただそれだけ言っておばけにでも遭った様に驚き走り去って行った。
何だ?今の。
それにしても人にぶつかって、ぶつかった女性が倒れたのに痛いだろそんな言葉を言い放ち助けようともしない男性に僕はなんだかむかついた。
その日、宿舎にもどりメンバーにその事を話すと、何故かまた全員が笑い出す。
「助けてあげたのにおばけ見る顔で逃げられたんでしょ?可哀想なマンネくん。」
ちっとも可哀想なんて思ってないくせに面白がって・・・。でもほんとなんで急に走って逃げたりするんだろう。
だけど、その答えは僕もすぐに知ることとなる。