電動惑星
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小熊のカシ

森の中 生い茂る木 ぽっかりあいた
野原に日が射す頃 彼は現れる

彼はカシ 「死」を知らない 可哀相な小熊
親は猟師に撃たれて この世を去った





それでも彼は待ち続ける 母の帰りをこの場所で





彼はカシ その名は 猟師に付けられた
彼はなんにも知らずに それを喜んだ

彼はカシ 争いを 知らない小熊
猟師に餌を与えられながら生きた





彼には仲間がいたけれど 長く猟師といたせいで
ヒトの臭いの染み付いた彼は 仲間外れになった





悪いのは すべて猟師 彼を孤独にした
それでも彼は 猟師が大好きだった

そして今日も 日が射す 小さな空き地の
切り株に腰を下ろし 母の帰りを待つ





もうすっかり大きくなり 名付け親の猟師でさえ
彼を標的とみなし 木陰で銃を構える

それでも彼は待ち続ける この場所で母のもとへと
あの猟師が連れていってくれることを

ただ… ひたすら…





悪いのは すべて猟師 彼を孤独にした
それでも彼は 猟師が大好きだった





森の中 生い茂る木 ぽっかりあいた
野原に日が沈む頃 銃声が響いた

彼はカシ 「死」を望んだ 可哀相な小熊
大好きな猟師に 撃たれて死んだ

一粒の雫が 切り株を濡らした