トイレも真下に移動。
いつまで続く仮住まい。
飼い主は自他ともに認める偏った映画オタクである。
「偏った」と言うところが重要で、全ての映画が好きなわけではない。
全てと言うより、ほんのひと握りの映画しか観ない。
ホラー、スプラッタ、バイオレンス満載の映画は選択肢にない。
恋愛物もかなり内容が限られる。
ドロドロ、艶っぽすぎるものは相当苦手。
その限られた中、選んで、選んで、それでもかなりの本数を観てきたが、選んだつもりでも失望しないわけではないところが面白い。
自分が好きな映画がどんなものなのか、正直まだよくわからない。
コメディは好き。だけど、やり過ぎはウンザリする。さらっとした台詞、何気ない返し、さりげない間。クスリとさせられて、お、面白い。と、なる。やり過ぎは胸焼けがしても、さりげなさ過ぎてはわからない。笑いが一番難しい。と、思う。
わからないから、面白そうだと思ったものは何でも観た。
片っ端からジャンルを問わず手当たり次第に何でも見続けてきた。
その中で、好きな映画はと問われたらすぐに挙げられる数本の中に、「紅の豚」がある。
元々は某航空会社の機内上映用に製作されたものらしいが、製作費がかさんだため公開になった。
と、聞いた。
年がバレそうだが、公開当初劇場で5回は観た。
後でビデオで観ればいいや。
そうは思えなかった映画の一つである。
メッセージが見え隠れするジブリ作品の中でも、はっきりと意図が見て取れる作品だが、押し付けられた感じはない。
鮮やかな空や海の色に映える真っ赤な機体。
機上のパイロットは戦争がイヤになって豚になってしまった元人間。
ユーモラスにも見えるトレンチコートを羽織った豚の声を森山周一郎さんがあてていた。
それで映画のピース、最後の一つがきっちり収まったと思える素晴らしい配役だった。
真っ青な空に吸い込まれて行く数えきれない機体の中に、一機また一機と数が増えていく。
映画中盤のワンシーンである。
風の音しかしない静かな風景。
それが何なのか説明はない。
だから、胸に響く。
森山さんもあの空に登って行かれたのかな。
これからどれだけ映画を観たとしても、あの配役に勝るピースに出会うことはない気がする。
とても寂しいです。
…うちのテンさんの名前も空の色から付けたんですけどね…。
…育て方…どこで間違えましたかね…?
自業自得でカラー付けてます。
コトちゃん、案外出来る子でした。