夕飯も食べ終わり、夜の国道をドライブしていた時のこと。
突然ボンの携帯が震えだした。
画面には「090」の数字。
首を傾げながらボンは電話に出た。
ボン:「はい」
声 :「もしもし? あのねモエコ(仮)だけど」
突然聞こえてきた高い声に、私の神経一点集中。
ボン:「あーっ!珍しいやん、どうした?」
ボンが小声で「前の会社の後輩の子」と教えてくれる。
モ エ コ ー ー ー !!
皆様覚えてらっしゃいますでしょうか。
約一年前、ボンと修羅場を迎えた時のことを。
その原因の浮気相手がモエコです。
モエコの話にこちらを気にしつつ笑顔で相槌を打つボン。
その横で私は気が気ではなかった。
さっきからパトカーと何台すれ違ったと思ってんのよ!
私 :「とりあえず早く駐車場に入れろ」
ボン:「今運転中だからさ、車停めて折り返すわ」
返事も聞かずに電話を切るボン。
なんだ、その男らしい話し方。
ボン:「さーにょん、ごめんね?(´・ω・`)」
なんだ、その甘ったれた上目遣い!
その姿をモエコに見せてやれ!
駐車場に車を停めた途端、私は助手席のドアを開けた。
ボン:「さーにょん、どこ行くの?Σ(~∀~||;)」
ボンが慌てて追いすがってくる。
私 :「会話の邪魔でしょ? どうぞごゆっくり~」
嫌味ではない。
聞き耳を立てるようなマネをしたくないだけだ。
ボン:「いいのよ。いていいの」
そんな心情を知らず、私の腕を掴んだままボンは携帯を開いた。
ボン:「もしもし? あぁ、大丈夫停めた。で、どうした?」
だから何だよ、その変わり身の早さはよっ!
モエコ:『あのね、車にキー閉じ込めちゃって』
そのセリフを聞いて私は助手席に座り直した。
どうやら艶めいた話ではないらしい。
ボン:「はぁ~!? 俺今工具持ってないよ」
モエコは何やら必死で他の人に電話したけど通じなかったとか、
スペアは実家にあるけど今1人暮らしをしていて帰りたくないとか、
その他もろもろまくし立てた。
あぁ、つまりこの子は、
私 :「とりあえず行くって言え」
ボン:「えっ? わかった、とりあえずそっち行くわ。どこら辺?」
って、ボンに言って欲しかったんだね。
そりゃそうだ、この寒空の下暗闇に1人ぼっちだもの。
電話を切ったボンに私は言った。
私 :「さて、じゃあ家に送ってもらおうか」
ボン:「えっ、何で!?∑(゚Д゚)」
私 :「帰るの遅くなるでしょ。親が心配するから」
ボン:「きゅーん(TωT)。ごめんね?」
私 :「いいのよ。暖かい飲み物でも買っていってあげな。男が上がるよ」
その夜、私は夢を見た。
ボンとモエコがキスする夢を。