7/20西日本新聞「ながさき読者文芸」

◎俳句 籏先四十三選

★陶房の若き陶匠今年竹 雲仙 城臺文江 

★白雲の羊の映る植田水 佐世保 小山雅義

 ※田の面に雲が映る、という発想と句はたくさんあるが、その雲の形「羊の映る」としたところに工夫がある。

★耶蘇の島海ほおずきを吹き鳴らせ 佐世保 森 誠

★ピカドンの語り部となり蝉しぐれ 佐世保 牛飼水鳥

★こより縒る母の手しのぶ星まつり 諫早 関山悦子

★合歓の花水路で洗ふ鋤と鍬 西海 森 保子

★なめくじや行く先知らす銀のすじ 諫早 碇 タキエ

★もどかしき病後の暮しかたつむり 諫早 篠崎清明

★ダンゴ虫手に転がして夏帽子 西海 楠本シヲリ

★うすものや後継僧は吾の友 対馬 神宮斉之

★初蝉や朝一番の贈り物 佐世保 五月女 守

★日本地図真っ赤となりぬ極暑かな 南島原 田中よしみ

★七夕や子等へのおもい筆走る 諫早馬場 薫

★五月雨やぬーつと現わるクルーズ船 佐世保 太田恵子

★七夕や澄んだ瞳の園児たち 佐世保 村上美佐子

★一念を貫き通し天の川 佐世保 荒木幸則

★紫陽花の群れて寄り添ふ町屋かな 佐世保 浦 正嗣

★読書好きの寡黙な夫や初夏の風 佐世保 松崎伸苑


◎歌壇 黒田邦子選

★実篤の仲良きことは美しきとう湯呑にて妻と古茶飲む 佐世保 小山雅義

★七夕や明日のよき日を願ひつつ短冊に書くこころをこめて 佐世保 村上美佐子

★医療費の通知とどけば高額のあの日の治療有難く思う 松浦 前田サツキ 

★七夕さま嫁の病がはよ治り孫らに笑顔とどけと祈る 大村 松永喜美子

★歯の治療のスタッフ一同和やかで優しい言葉に痛みやわらぐ 佐世保 松崎伸苑


◎諧句 川田金太郎選

★梅雨途切れ蝉はここぞと競い鳴く 南島原 板山良継

★毎日がラジオと共に野良仕事 大村 内田和代

★しみじみと雨の音聞く夜明け前 大村 串崎洋一

★梅雨前に雨どい修理気持ち晴れ 大村 中嶋則昭

★いばら道刺して刺された棘も抜け 長崎 荒井孝憲

★英国の陛下もてなし心打つ 佐世保 牟田一彦

★晩年に嬉しさの増す詩句綴り 佐世保 中島由美子

★モニターの前に陣取り観せぬ猫 佐々 衛藤佳奈子

★目に眼鏡耳に補聴器足に杖 松浦 前田サツキ

★側溝を流れ棚田へ命水 松浦 母袋トヨ子

★熟れすいか選びいのしし食い荒らす 西海 田中加世子

★まだ八十路百歳目指す心意気 壱岐 砥綿 滿

★誰も皆主役の今日という舞台 佐々 法本安子 

★磨くほど島の宝に子は育つ 松浦 舩原清洋