この時期、予算案として、市民が知ることができるのは、ホームページ上で公表される「概要」というPDFです。4月末頃に、「予算事業シート」が公表され、もう少し詳しい予算の中身を知ることができます。

 

予算は、来年度の事業計画を示したものです。数字が多いので、予算といえば、歳入歳出のお金のことと勘違いしそうですが、重要なのは来年度何を行うのかの事業計画が示されるということです。

 

前回、総評として、「令和2年度の一般会計予算は、箱モノ等の公共施設の建設事業は高止まり状態のまま、過去の高額な借金の返済が始まり公債費が増え始め、財政の硬直化(自由になるお金が減っていく状態)傾向がさらに強まる予算」だといいました。

 

特徴として、およそ20年間に1度しかない大規模公共投資である「ごみ焼却施設」の建設が終了したにもかかわらず、合併事業の駆け込みで投資が高止まりしていることがあります。

 

今回はまず、その内容を見てみましょう。

 

「廿日市市3大プロジェクト」として予算案概要の冒頭にあるのが、宮島口周辺の整備事業です。ターミナルビルは県の事業なので、市予算の約11億円の中身は、周辺道路の整備が主なものではないかと思います。5千万円程度はターミナルの中に観光案内施設を作るための経費のようです。今後市営駐車場を2階建てにする計画もありますから、整備の完了は令和8年度だそうで、まだまだお金がかかりそうです。

 

その次にあるのが水族館の整備です。約8億円。新しい施設を作るということです。水族館はリニューアルした時から、10年ごとに10億円程度投資して魅力を持続くしていく計画でしたから、当初の計画通りかと思います。それに水族館は入場料収入の一部を投資に充てるのでしょうから、一般会計の中では特殊です。

 

次に、新機能都市開発事業です。予算規模こそ4,300万円ですが、この事業は土地区画組合(組合員は土地所有者)を設立して行うので、膨大な経費(150億円以上)は組合が負担します。とはいっても、その資金を用立てることを組合はせずに、ゼネコン業者が代行して行う「代行方式」というやり方でこの事業は行われます。造成後の土地の売却益で工事費を賄うということなりますから、一義的には市の予算は多くはいらない、というのが市の説明です。ですから、令和2年度の予算は、組合設立準備や道路の予備設計の費用です。しかし、令和4年度から造成が本格化する計画のようで、市も周辺道路を本格的に整備しなくてはならず、事業費も多額になっていくでしょう。

 

市の説明は、「雇用の創出、若者の定住、賑わいの創出なdp、新たな税源の確保につなげる」となっていますが、大規模な産業用地を造成して企業を誘致するという発想は、バブル以前の昭和50年代までの発想です。少なくとも日本の経済状況は人口減少による需要縮小で悪くなるばかりで、企業が投資すると考えるのは無理があります。市は、世界的ホテル事業者が何社も手を上げているといいますが、そのことを公に聞いたことはありません。ましてや、このコロナ騒ぎです。このたびの事業では平成8年度ころから立地が始まる計画なので、コロナが影響することはないでしょうが、世界経済は一瞬にして悪くなります。インバウンドに頼る事業計画であるのであれば、非常に危うい計画といわざるを得ません。

 

そのほか、この事業への私の意見は、以前「地方自治体は儲からない?」に書きましたので、そちらをどうぞ。

 

そして、最後の3大プロジェクトの一つが、「地域医療拠点等の整備」です。約7億円の事業費で、地御前のJA廣島総合病院の隣の駐車場を医療福祉の複合ビルにする事業です。医療福祉に加えスーパーも誘致した(とはいってもJAが無理やりやることになった、と聞いてますが)拠点で、今後市にとって大きな核になる施設であろうと思います。完成は令和5年度だそうです。

これらの事業は、新機能都市開発を除いては、必要な事業だと思います。ただ、この手の大規模事業で問題になるのは、その後の借金の返済と維持管理経費の増大です。何度も書きましたが、これからの時代は高齢者と子どもそして格差拡大のために扶助費が増え続ける時代です。借金返済と維持管理にお金がかかって、福祉や教育にお金が回らなくなる事態は避けなければいけません。

 

ですから、大規模事業を始めるためには、その後の財政負担がどうなるのか、10年後の財政状況まで推計して、大丈夫かどうかを議会に示し市民に公表して、その可否を判断すべきです。廿日市市でも財政推計は「中期財政運営方針」として行われていますが、5年間という期間です。これくらいの大規模事業が重なると、10年間の財政計画が示されるべきでしょう。

 

続きは次回。