「デヴィッド・ボウイの最も好きなアルバムは何か？」と自分に問うた時に、多くのボウイファンは困るのではないかと思います。「ジギー」ではあまりにもベタ過ぎるし、「ロウ」も人気がある。「レッツ・ダンス」は同時代を過ごした人は良いけど、後追いの人にとっては時代遅れになってしまった作品です。

そこで選ばれがちなのは「ステイション・トゥ・ステイション」ではないだろうかと思います。1976年1月23日に発売されたアルバムです。

前作の「ヤング・アメリカン」でソウルやファンクを消化した後に、ヨーロッパへの回帰を意図したアルバムになります。基本的にはダークなアルバムです。この後にベルリン3部作を製作することを考えると、過渡的なアルバムになります。

B面のスタートは、コミカルな曲の「TVC15」。

この曲をTVショーにて演奏しますが、コーラスに呼んだのがクラウス・ノミ。このパフォーマンスにより、アンダーグラウンドでパフォーマンスをしていた、クラウス・ノミは一気にブレイクします。

クラウス・ノミは、もともとはクラシックの声楽家として出発し、奇抜な衣装でオペラ風のパフォーマンスをしていたところをボウイの目に留まりました。その後、2枚のアルバムを残して83年にエイズで亡くなりました。そのドラマチックな半生と悲劇は「ノミ・ソング」というドキュメンタリー映画で貴重な映像とインタビューで詳しく語られています。

全体的には暗く感じるアルバムですが、ロックとソウル、コミカルさとダークさとがごちゃ混ぜになっており、捉えどころのなさがボウイファンにとってはボウイらしさと映るのではないかと思います。

デヴィッド・ボウイムーンエイジ・デイドリーム [Blu-ray]

Amazon（アマゾン）

デヴィッド・ボウイ「ステイション・トゥ・ステイション」（1976年1月23日発売）