人は何回悪い事が続くと自分のツキのなさを呪うのだろう。

不運が2回続くとため息をつき、3回続くと「まさかこんなはずじゃ」と思い、4回続くと怒りが沸くか、自分の不運に呆れ果てて萎んでしまう。
さて、そこからどう立ち直るかだ。




この日フライフィッシングをする私は久しぶりに川に向かった。3月は魚釣りが解禁になるのだ。
釣り人は半年の禁漁期間を乗り越え、喜び勇んで川に向かうが、すでに頭の中は妄想でいっぱいだ。

キラキラした水面からサカナが飛び出してくる瞬間を何度も思い描く。
この日の私もその1人だったが、釣券を買おうとしたところで、なんとまだその川は禁漁期間だったことに気づいた。

川は地域によって解禁になる日がまちまちで、私の確認不足による勘違いだった。
気を取り直して、すでに解禁していた2時間ほど離れた他県のS川に向かう。もう昼過ぎだ。



コンビニで釣券を買うが、値段は高めなので、こりゃサカナの放流に力が入っている証拠だと1人合点しほくそ笑む。

しかし、全域をクルマで走り回ったが、どこにもサカナがいない。気力がどんどん萎えてくる。

しかも入渓場所を探している途中、焦りからか、クルマを切り替えした時にバックで壁を擦ってしまう。

なんて日だ。


川に入ってると土手を2人連れの釣り師が通りかかる。身振りで釣れたか聞かれるが、私が両手でバツを描くと笑いながら自分の腕を叩いている。そう、私の腕が悪いというのだ。

苦笑しながら私は川を上がり、2人に話しかけた。
「やっぱり腕ですかね?」
だが彼らは真面目な顔で答える。
「最近は川鵜が多くて、この辺りは釣れたことないなぁ。」
やれやれ。そううまくは行かない。
今日はノーフィッシュの諦めがついて、かなり待ち合わせには早かったが、この県に住む友人と夕食を共にする約束をしていたのでそこへ向かった。


しばらく走るとヤケに道が混み始め、見渡す限りクルマだらけになり、ノロノロ運転がついには動かなくなった。

やがて遠くからパトカーが近づき、マイクで事故による通行止めを知らせている。

まずい。すでにカーナビは到着時刻がギリギリを知らせている。

気が遠くなる迂回を繰り返して、やっと待ち合わせ場所にたどり着いたが、大幅に時間を過ぎていた。
なんだか疲れて、久しぶりの友人との再会も話はイマイチ盛り上がらなかった。


その後なんとか家路に着き、ため息と共に今日1日を振り返る。

解禁日を間違えて、遠回りした川にはサカナがいなくて、クルマにキズをつけ、事故で渋滞に巻き込まれ、友人との再会に水を差されて疲労困憊...。

今日はついてなかったなぁ。

ついてなかった?

いや、いろいろあって楽しめたよ。