私はこのコンサートを一生忘れないだろう。いや忘れないようにしよう。
会場のジン グルが時計の音を奏でたとき。オルガンもどきのオートマタ。そして、空席だらけの会場に充満した熱気。
この不思議な体験は、私にとって、いや社会にとって音楽は贅沢品でしかなかったか、あるいは絶対に必要なものであったかを改めて考えさせられる期間であり、そのせいかとも言えた。
演奏は渡辺氏らしく、ゆったりとした少し古い解釈だった気もするが、それももどうでも良い。会場でミューズが、天井で音の連なりに祝福があったのは間違いない。
ホルンのとちりや、金管の間にあったコロナ対策のスクリーンのせいか、オケの音は大きく、直線的に響いていたと思う。しかしそれは、まだ死んでいない。芸術は人が支え、人が編み出すのだと宣言する、ここの力強いエネルギーであったと思う。
涙よりも、高揚感に寄った一日。私はこの後どうすればよいのか。次の演奏まで、いや実は翌日オルガンコンサートにも行った。サントリーホールの残響はいつもより、長かった。