我らがクニは、10の部族の連合であり、それぞれの部族の長は、大人と呼ばれている。
部族の名は、火・水・木・金・土それぞれに陰陽がある。神子は女、神子に唯一会え、神子の神託を大人に伝える太子は
男。世襲ではなく、先代の神子の指名により、その座につく。神子は、純潔を全うせねばならず、太子は、その護衛の責任を負う。
神子・太子の出身部族は、神子直属の部族となり、神役と呼ばれた。
20年前、日が月に隠れ、日中に暗闇の生じた日。月読様は、太子を通して、神託を伝えられた。
「月と日が重なるは、瑞兆。この年に産まれた子には、日と月の力が備わろう。その子らの左右の腕に日と月の刻印を与えよ。そして、5年の後、その子らをここに集めよ。その中に神子、太子たるものが現れる。」
私と「弟」は、その年に産まれた60人の中にいた。
5年後、刻印を持った幼子達は、集められ、月読様の神殿に 登ることを許された。
月読様は、神々しいほど、美しかった。40歳は過ぎているはずなのに、肌のはりは、少女のようだった。可憐さと妖艶さを併せ持ち、この美しさは、神が与えたと言われるのがもっとも説得力をもつように思えた。薄い衣がより、美しさを際立たせていた。
その脇に控えた太子が、重々しく口を開いた。
「月と日輪の重なりし年に生まれた子らよ。そなた達は、天より特別な力を与えられておる。月読様の次の神子、そして次の太子は、この中におる。まず、自分の名の札が置いてある座に座れ。」
私達は、太子の迫力に圧倒され、無言のまま座についた。目の前には小刀とお神酒の入った杯が置かれていた。
「隣に座ったものが、宿命の相手。まず、互いの血を合わせ兄弟の契りを結べ、刀で指先を切り、お神酒に落とせ。
そして女が先に口をつけろ、男が飲み干せ。」
太子は、言葉を続け皆は、それに従った。
「いまより、そちらは姉弟だ。弟は命を賭け姉を守らねばならぬ。姉は、神子のように弟を導くのだ。よいな。」
「はい。」全員が何かに押されたように返事をした。
美しい音色で月読様が語りはじめた。
「そちらは、二人だけで、一年を越える旅にでる。持ち物は剣と薬のみ。
姉には目隠しを施す。わらわの念の入った布じゃ外してはならぬ。外せば厄を招く。よいな。」
月読み様は、姉に目隠しをし、姉に薬を弟に剣を手渡していく。圧倒的な威厳と悲しみを宿した目、泣いているようにも見えた。
「今こそ、日の出ずる地へ向かうのだ。」
私の言葉を「弟」があらんかぎりの力を喉に集め、叫びを上げ繰り返す。
大人達は、「いにしえより守りし、この国の定めを、犯した神子に我等が未来を託せるか?天【あま】の声を授けられしは、純潔の乙女のみ。国を豊かにするは、「とよ」と月読様より名付けて頂いた新たな神子。」
「黙れ!月読様は10年も前に亡くなられている。6歳にも、満たぬ幼子を神子に立て、この国の実権を握ろうなど、卑しい心根がわからぬと思うたか?それに月読様の最期の神託を忘れたか?いずれ、西より大きな災いが迫り来る、抗ってはならぬ。祖の地を捨て東を目指せ!との言葉を、今がその時ぞ。」
「弟」の声は大人達のすえた匂いを変えられていない。殺意を持ったヒトが放つ匂い。この刻がやってくるのは、わかっていた。
そして、私と愛する「弟」、自分に宿っている新しい命が、間もなく消える。
「月読様、そなたと愛する二つの命。それが、新しきクニの礎となる。それが、そなたの与えられたさだめ。涙を拭おうともせず、伝えられたコトバ。今が、その刻なのですね。」
弦を引き絞る音、矢が放たれる音を無数に聞いた。剣を振るい、矢を叩き落とす金属音。
「この音ではない。この音では、このクニは守れぬ。」
「神子!お逃げ下さい。ここは、私が。うぐっ。」
私は翻り、「弟」の声を背にして、祭壇に種火を移した。
発火性の強い黒き水を予め振り撒いてある。呪いに使う大量の碧き粉が、炎の色を変える。大きな碧き炎は、空に立ち上がり、我らが意志をつなぐ者達に、神子がクニを思う赤心が伝わらなかったことを知らせるであろう。我が死、そして矢的と逆名を名付けた生まれることのなかった命の終わりとともに。
「このクニは、民は、避けたくとも避けがたい未来から目を逸らす。彼のクニの農具でさえ我らが剣を砕くというに、如何に戦うというのか?時間や手間をかけて、作り上げてきた田、クニを惜しみ、自ら滅びへ、ゆっくりと歩んで行く。月読様、天の声を伝える我が身は、天の理に従います。」

20年前、この祭壇で 月読様が受けた神託。そして、5年前に託された神子の役割。
全うできたのですか?
念を空に放ち、その刻を待つ。外の喧騒と対照的な穏やかな心地だ。
枠順、調教等あるが、現時点、桜花賞1-2着が抜けた存在。未体験の距離であることは、他馬も同様、間に入る馬は2強がどれくらい相手を意識するか?距離適性で変化しそう。三連複二頭軸で、手広く流す。