かえる堂本舗の読書日誌-101011_1851~01.jpg


★★

『月と蟹』

道尾秀介(文藝春秋/2010年9月)



「世界は大きくて理不尽だから、

僕たちは神様を創ることにした


海辺の町、

風が吹きすさぶ秘密の場所で

子供たちが見つけた

『ヤドカミ様』の正体は――」  (前オビより)


***


道尾さんが昨今大きなテーマとしている、

子供が受けた心の傷、虐待、成長が、

今回も主題となっている。


率直にいえば、直木賞を狙った(と邪推したくなるような)、

たいへんに文芸色の強い、理解しやすい作品。


「賞を狙う」なんて、

大好きな作家の方にとても失礼な言い方だけれど、

「子供の受けた傷」という、ある程度、

ご自身の中では熟成されたテーマを、

巧みにまとめ上げた感は否めない。


わたしの受け取り方がひねくれているのかもしれない。

でも、主題も、筆致も、構成も、

「自分の土俵で勝負」している感じがして仕方がないんだよねー。

もしくは、「絶対にこのテーマで直木賞をとる」というこだわりとか。


うーん、常に進取の気象を期待されても、

作家の方は困るだろう。

これだけ完成度の高い作品を、コンスタントに刊行している方に、

「もっと」と言ってしまうのは、

読者のわがまま、それこそ理不尽だろう。


だけど、道尾さんだからこそ、

「こうきたか!」という作品を求めてしまう。


十分に堪能できます。

こころを震わすフレーズもあります。

たくさんの人が手にとってほしい本でもあります。


でも、道尾さんが、

子供、虐待、心の傷という、ある種ご自身の「トラウマ」から脱せられ、

新たなテーマで作品を発表なされることを、

一読者として楽しみに待っています。