東京証券取引所は2021年5月19日、ペルセウスプロテオミクス(東京・目黒、横川拓哉社長)の東証マザーズへの上場を承認した。順調に進めば、6月22日に上場となる。同社は2020年2月に東証マザーズへの上場を承認されていた。だが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などで市場環境が悪化したため、上場手続きを延期していた経緯がある。

 ペルセウスは東京大学先端科学技術研究センターの児玉龍彦教授、浜窪隆雄教授(現日本医科大学教授)、油谷浩幸教授らの研究成果を基に、2001年2月に設立されたスタートアップだ。2009年2月以降、富士フイルムの連結子会社となっていたが、2018年3月にベンチャーキャピタルなどを対象に増資を実施して、連結対象から外れて株式上場を目指していた。

 同社は、上場を再度申請したのは(1)昨年に比べれば株式市場の環境が改善している、(2)自社で開発を進めている抗トランスフェリン受容体(TfR)抗体(PPMX-T003)の開発が順調に進んでいる、などを理由に挙げている。

 PPMX-T003は、ファージディスプレイ法によって得られた、TfR1に作用する抗体だ。鉄結合蛋白質のトランスフェリンは鉄と結合した後、TfRを介して細胞に取り込まれる。鉄は、ミトコンドリアやエネルギーの伝達などのためあらゆる細胞が必要としているが、その必要量は限定的だ。しかし、赤芽球やがん細胞は、より多くの鉄を必要としており、TfRを発現している。そこで、抗TfR抗体によってTfRに蓋をすることで、鉄の取り込みを阻害し、兵糧攻めにしようという戦略だ。

 上場に伴う公募で330万株を新たに発行し、オーバーアロットメントによる売り出しは49万5000株を予定している。想定価格は870円で(前回は970円)、公募増資後の発行済株式総数は1168万6400株となる。発行諸費用などを除くと同社が手にする資金は約26億円になる見込みだ。そのうち、約15億円を研究開発費に投じる計画だ。具体的には、現在開発中のPPMX-T003における真性多血症(PV)治療薬としての第1相臨床試験などに振り向ける。なお、主幹事はみずほ証券からSBI証券に変更している。

2021年のIPOとしては2社目

 ペルセウスが上場を果たせば、2021年としては3月19日に東証マザーズに上場したステラファーマに続く2社目となる。日本国内に、現在上場しているバイオベンチャーとしては46社目だ。

 業界関係者の話を総合すると、2021年中に新規株式公開(IPO)と目されていたスタートアップは6社ある。ステラファーマとペルセウスはその「上場下馬評」に載っており、残り4社の動向に注目が集まろう。ワクチンの普及が進まない日本では米中に比べて景気回復が遅れているが、株式市場は総じて高値で推移している。2020年はモダリス、ファンペップ、クリングルファーマの3社が上場を果たした。2021年下期にかけて上場数が増えるかどうかは、IPO予備軍の実力にかかっている。