また、今年も母の日がやって来る。

私と夫は、なん十年も前の　母の日に結婚式を挙げた。

だから、母の日は絶対に忘れない結婚記念日でもある。

三人の子供達は、それぞれ独立して私達夫婦二人で暮らしていた。

何年も前の事、ある母の日に　夫は鉢植えの真っ赤なカーネーションをかかえて　私にさしだした。

夫「お母さん、いつもありがとう。これからもよろしくな。」

私「わぁ、ありがとう。あなたのお母さんじゃなくて、妻だけど嬉しいわ。」と言った。

一生の内、心のこもった花を受け取ったのは何回あっただろうか。

思い出すのは、職場を退職した時にお疲れ様でしたと言われ、花束をもらった時だ。

だけどこれは、寂しい花束の感じがした。

母の日のカーネーションは、ありがとうのお花だ。感謝される側としては、普段の苦労も吹き飛んでしまうぐらい　嬉しいものだ。

夫はその時、お花屋さんへ行って、いろんな色のカーネーションが並んでいる中で、目について選んだのが　真っ赤なカーネーションだった。

私の好きな色はピンク色。

ピンクの色は、心を和ませてくれる色だと思う。だから桜の花が咲く季節が一番好きだ｡

イライラしている時も、見ているだけで、気持ちが優しくなる感じがする。

だから、私は、お花を買うときは、いつもピンクの物を選んでしまう。

私がピンク色の花が好きなのを夫は知っている。

だけど、夫は真っ赤なカーネーションを選んでくれた。

お母さんは、真っ赤な太陽のように暖かく、みんなを照らし　いつも明るいままでと思って、あえてそれを選んでくれたんだなと思う。

あれから何年か過ぎて、夫に思いもしなかった病名をを知らされた。

すい臓がんが静かに忍び寄って来ていたのだ。

そして、夫は亡くなった、

夫が亡くなって、初めての母の日が来た。

次男夫婦から、真っ赤なカーネーションが送られてきた。

夫の時と全く同じ鉢植のカーネーションだ。

このお花、あの時と同じ物だ。

照れながらも、私にカーネーションを差し出した夫の事を思い出した。

真っ赤なカーネーションは、窓際に沢山置いてある植木鉢の真ん中に置いた。

周りの緑色の観葉植物が、パッと明るく映えた。

その中での真っ赤なカーネーションは、ひときわ輝いて見えた。

すい臓がんステージ4、肝臓転移、余命宣告…

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夫から真っ赤なカーネーションを