●「スイス銀行によるナチス政権への財政的援助がなかったら第二次世界大戦は数年早く終息していたであろう」と指摘する人がいる。実際、ナチスの戦争遂行能力の維持に、スイスほど大きな貢献を果たした“中立国”はなかった。


●第一次世界大戦で敗れたドイツの戦争賠償処理を主目的として、1930年にニューヨーク連邦準備銀行をはじめとする世界中の中央銀行が集まって、スイスのバーゼルに「BIS(国際決済銀行)」が設立された。

しかしこの銀行は、ヒトラーの政権掌握以降、アメリカとイギリスの資金がヒトラーの金庫に流入する窓口の役目を果たすようになり、正反対の機能を持つ銀行になった。BISは積極的にドイツへの融資を仲介し、その再軍備を大いに支え、ヒトラーの戦争経済に協力し、必要な財源確保に加担したのである。


●第二次世界大戦中、ヨーロッパ諸国間の金融取引は、金と中立国スイスの通貨であるスイスフランが唯一の決算手段として使われていたため、ナチス・ドイツは、征服した国々から金を略奪し、「スイス国立銀行」にあるBIS名義の口座に送り込むようになった。

BISや「スイス国立銀行」にとっても、ドイツとの金取引は魅力があり、取り引きは盛んに行なわれた。戦場では敵味方に分かれて戦っているにもかかわらず、各国の中央銀行の代表たちは、BISがドイツとの取り引きを続けることを容認し続けたのだった。