心に響く名言
36.4 アインシュタインの脳
アインシュタインは76歳で、腹部大動脈りゅうが原因で亡くなります。
彼の遺体は、生前の希望に従い焼却されました。その灰は近くのデラウェア川に流されました。ところが、この天才の秘密を探るべく彼の脳だけが死後に、勝手に解剖学者によって取り出されたのでした。そしてそのスライスされた脳組織が密かに世界中に配られました。
アインシュタインの脳組織を手に入れた世界中の研究者が、天才と一般人の違いを見つけようとしました。その重さやニューロン(神経細胞)は、一般の人との大きな違いを発見することはできませんでした。
それとは別に、最近になって彼の脳をいろいろな角度から撮影した写真14枚が新たに発見されました。下の写真はその中の一枚で、脳の右半球を映したものです。
[アインシュタインの右半球の脳の写真]
:雑誌Newtonライト「脳のしくみ」から転載
アインシュタインの脳には構造的にはいくつかの特徴がありました。
彼の脳では前頭前野にしわが多く、通常の人よりも表面積が大きかったのです。この部分は、計画や推理といった思考に関わる領域です。
彼の物理学上の発見のひらめきに貢献していたのかもしれません。
またスライスされたアインシュタインの脳を調査していたある研究グループは、彼の脳のグリア細胞が、大脳皮質のある部分で普通の人と大きく異なり二倍近くも多いことを発見しました。
このグリア細胞(膠細胞)というのは、名前のとおり、ニューロン(神経細胞)に栄養を供給したり、こわれたものを除去する役割りがあると考えられていました。
成人の脳内には、神経細胞が約1000億個ありそれぞれが他の神経細胞とネットワークを構築し複雑な知的作業を行います。従来は、人間の知的な活動はこのニューロンの働きと考えられてきました。
ところが、脳の中では脇役であり、ニューロンとほぼ同じ数量が存在するグリア細胞の中には、ニューロンのような電気的、化学的な信号のやりとりはしないものの、知的な情報のやり取りをして、人間の知的な活動につながる働きがあるのではないかという、まだ仮説ではありますが、そういう説を提唱する脳科学者が現われたのです。
グリア細胞、特にその中のアストロサイトと呼ばれているものがその対象になっています。
下のイラストは脳の神経細胞とグリア細胞を描いたものです。この図のグリア細胞は、ミクログリア細胞と呼ばれるもので、脳内の免疫を担当していると考えられています。すなわち何らかの原因で傷ついた神経細胞を修復したり、シナプスに異常がないか定期的に検診をしているのです。
:雑誌Newtonライト「脳のしくみ」から転載
グルア細胞にはこれ以外にもオリゴデンドロサイトとかアストロサイトがあります。
アストロサイトは星形をした細胞ですが、血管とシナプスをつなぐ役割を果たしていると考えられていました。
そのアストロサイトに、遠く離れた細胞どうしを結び付け、情報を統合するような別の働きがあるかもしれないというわけです。
人間の知的活動の中で、まったく関係のない事柄自体を結び付けて考えたり、突然何かがひらめいたりする能力にこのグリア細胞が重要な役割を果たしているのかもしれません。
アインシュタインのような天才的なひらめきがをする仕組みがわかり、同じようなひらめきを起こすための具体的な方法まで解明されるとさらに人類の進歩や発展に寄与することは間違いありません。
脳科学者たちの研究がそこまで進むことを期待したいですね。
このアインシュタインの項を執筆するにあたり、以下の書籍を参考にさせていただきました。
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本ブログをお読みになられて、興味をもたれて、さらに深くアインシュタインについて学びたい方は、これらの書籍にも目を通していただければと思います。
『科学者と世界平和』 (講談社学術文庫)
アインシュタイン (著) 井上健 (翻訳)
『アインシュタイン150の言葉 新装版』
ジェリー・メイヤー (著), ジョン・P・ホームズ (著)
『物理学はいかに創られたか(上・下)』 (岩波新書)
アインシュタイン (著), インフェルト (著), 石原 純 (訳)
それでは、最後にアインシュタインの名言をもう一度味わってみましょう。
「大切なのは、疑問を持たない状態に陥らないことです」
″The important thing is not to stop questioning.”
このブログを最後までお読みいただきありがとうございます。