〒634-
橿原市 町
(署名自著)?
職業
電話 ― ―
(ほか別紙 名。簡易な事務については上記請求者3名を代表として
連絡することで他の請求者への個別の連絡を省略することができる。)
八木駅南税金ビジネスホテル・分庁舎についての住民監査請求書
下記のとおり、地方自治法第242条第1項の規定により、別紙事実証明書を添付の上、必要な措置を請求する。
記
市民の声
平成27年3月26日、橿原市議会3月定例会本会議において、橿原市長 森下豊氏により提案された八木駅南市有地活用事業(以下、「本事業」)についての契約議案「議第24号 特定事業契約の締結について」が橿原市議会議員の賛成多数をもって可決され、橿原市とPFI八木駅南市有地活用株式会社(以下、「大林組グループ」あるいは、「SPC」)代表取締役 森田兼光氏との間で2月中に交わされていた仮契約が、本契約として成立した。
これについて、まずは、「市民の声」をお聞き願いたい。
(1)住民無視・なぜ、市民への説明と市民からの意見聴取をしないのか?
「市民に尋ねないのかということは、そういうことではございません。それにつきましては、今の我々が調査をしますアドバイザリー業務の中で、きちっと市民の意見も取り入れるところは取り入れていきたいと考えております。」
(2013.09.20 : 平成25年9月定例会(第4号)本文 インターネット検索による発言NO.134)
また、平成26年4月11日に行われた第6回市有地活用検討委員会では
「民間資金等の活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律(以下、「PFI法」)の精神として、他市の事例では市民説明会などを行い、ご意見を吸い上げた形で次のステップに移るということをやっており、実施方針(平成26年4月30日公開)後の質問回答では、業者だけでなく住民からの質問も受けるということは必ずやらなければならない。議会にはパブリックコメントはしないと答弁したとしても、QAをやれば同じになる。(筆者要約)」
(事実証明書①平成26年4月11日第6回市有地活用検討委員会議事録P.61~63)
市民側は、これら行政内の議論を知らないまでも、これだけ大規模な事業について説明が何もないことに不審を抱き、平成26年6月20日と、平成27年1月20日には、奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合橿原支部(「環境衛生同業組合」は誤記)がパブリックコメントの実施その他を求める「要望書」を市長宛てに提出している。
平成27年2月18日には、橿原市民団体連絡会が、「緊急の要求書及び公開質問状」において、市民への周知と市民参加などを訴えたが、市の広報に掲載された本事業の説明は、その事業費用さえ示さない粗雑なものであり、これら市民団体三者は、連名で平成27年3月9日付け「緊急の直訴状」を市長・議長宛てに提出するに至った。
市民に対する説明と意見聴取は、PFI法の精神として行う必要があるということは、ほかならぬ市が採用した市有地活用検討委員会の有識者が述べていることである。
その有識者の前では市民向けQAを行う素振りを見せながら、契約の議決に至る最後までそれも実施せず、結果として有識者委員を欺きながら事業を進めていることについては、違法ないし不当であると言わざるを得ない。
なお、この「市民への説明不足」は、新たな疑惑を引き起こしている。
市は、議会や、八木駅周辺の商店主たちに対して、本事業におけるレストランは夜の営業を行わないため、宿泊客は外食することになり、近辺に観光消費額が落ちると説明しているが、それはあくまでもホテル内の高層階に位置するレストランに限った話であって、建物の一階に位置する飲食物販店においては夜の営業も行う予定であることが、平成27年9月16日の市議会の奥田寛議員の一般質問において判明した。
八木駅周辺の隆盛に関心のある一市民の立場としては、そのような説明は今まで聞いていない。
さらに奇妙なことには、観光客が夕食を八木駅周辺の飲食店で食べるかもしれないという淡い期待をあおるかのように、平成27年3月26日、市は、市議会にて森下みや子議員の質問に対して年間観光消費額が10億円であると答えて本事業契約の議決をとったが、それよりわずか二週間前の平成27年3月9日に、市が橿原市民団体連絡会宛てに返した「緊急の要求書および公開質問状に対する回答」においては、
「当該宿泊施設は観光客およびビジネス客双方を誘客対象としており、観光消費額を半分程度と仮定しても年間5億円から6億円程度の経済効果を見込んでいます。」
(事②市民団体提出の要望書と回答)
と、観光消費額の見込みを半分にしており、およそあてにならない不明確な数字をその時々で使い分けて市民と議員を欺いている感が否めない。
もしも、市民向け説明会があれば、年間5億円なのか、10億円なのかという大きな数字の見込み違いについて、市は一から説明をやり直さなくてはならなかったであろうが、その機会は失われたままとなっている。
住民を無視すれば、住民を欺いているのではないかという疑惑が生まれ、疑惑は政治不信へとつながるということを、市は理解するべきである。
(2)民業圧迫・そもそも、ホテルは税金を投入すべき事業なのか?
本事業の基礎資料となった、「八木駅南市有地活用事業アドバイザリー業務委託 報告書(宿泊等需要調査編)」では、140室の税金ビジネスホテルが70%の稼働率で成り立つためには、98室分の宿泊客を他の市内民間ホテルから奪ってくることが前提となっていた。
これは、紛れもなく民業圧迫を税金で行っていることになり、平成12年5月26日に閣議決定された「民間と競合する施設の改革について」(事②にも含まれている)に違反し、これを引用した平成12年3月29日(平成17年10月3日一部改正)自治事務次官通知「地方公共団体におけるPFI事業について」や、平成12年6月9日自治事務次官通知「民間と競合する公的施設の改革について」、さらにこれを引用した平成17年3月29日総務省「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(以上、事③閣議決定違反関連通知)にも自動的に違反している。
市自身も、平成27年3月市議会の市庁舎建設事業等に関する特別委員会において、閣議決定には従っていないことを認めている。
(事④平成27年橿原市議会3月定例会 市庁舎建設事業等に関する特別委員会録P.21~23)
もしも、税金を投入せず、市が誘致した民間ホテルが民間同士で宿泊客を奪い合うのであれば何ら問題がなく、市が誘致したホテルが競争に敗れ去ったとしても、そのことについての市の(市民への)責任は薄い。
しかしながら、本事業においては、140室(約200人)70%の稼働率を実現するために、税金を投じて外構・内装を作り上げたビジネスホテルを宿泊客が選びとり、その分だけ、宿泊客が、他の市内民間ホテルを使用しないということを実現しようとしている。
つまりは、純粋に民間に任せておけば「民間との競争に敗れる可能性がある」ものを、税金の後押しによって、「民間との競争に勝つホテルを作る」ということを目的とした公共事業にしてしまっている。
このホテルが民間事業者の独立採算だと市が主張するのは根本的に間違っていて、その建設費部分の公金の支出と、公共事業としてやるからには、宿泊70%の稼働率という目標を持ったことについて、間違いなく市には、(市民に対する)責任がある。
事業目的自体が民業圧迫であり、民業圧迫を戒めた閣議決定とPFI通知他に反し、市民の福祉のために支出されるべき公金が、市民である市内ホテル業者の直接的な不利益のために支出されている点において、明らかに不当である。
なお、閣議決定違反による損害金の発生については、別途、後述する。
平成26年6月20日と、平成27年1月20日に、奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合橿原支部が市長宛てに提出した「要望書」には、はっきりと「民業圧迫」に対する憂慮が表明されている。
平成27年3月6日付けで、全国旅館政治連盟、奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合、日本旅館協会奈良県支部、奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合橿原支部の連名で市長あてに提出された「要望書」には、平成12年閣議決定「民間と競合する施設の改革について」が別紙として添付され、これに違反することも指摘されていた。
そして、本事業の実施方針が示された5ヶ月後の、平成26年9月には、橿原市兵部町の橿原タウンホテルが廃業に追い込まれた。
市が、株式会社長大と、株式会社日本ホテルアプレイザルに作成させた「八木駅南市有地活用事業アドバイザリー業務委託 報告書(宿泊等需要調査編)」によれば、この橿原タウンホテルの宿泊部屋数は37室であった。
同時に、橿原市久米町で83年間営業してきた老舗の好生旅館(13室、宿泊可能人数は50人以上)を約100室のホテルに建替える計画が進められていたが、本事業のあおりを受けて頓挫した。
平
成27年2月25日に行われた橿原市議会の市庁舎建設事業等に関する特別委員会において参考人招致に応じた奈良県旅館・ホテル生活衛生同業組合橿原支部長であり、好生旅館のオーナーでもある桜井好央氏は、市が139室のホテルを建てると採算に問題が起きることから建て替えの断念を検討していると明かし、「一生懸命頑張って納めた税金で首を絞められるのはざんきに堪えない」と訴えた。
これに加えて、平成27年9月17日の市議会一般質問では、成谷文彦議員の発言により、八木駅南の、本事業と同じ橿原市内膳町において近鉄グループがホテルの計画を検討しながらも断念していることが明かされている。
さて、このように度重なる民業圧迫をやめて欲しいという要望と、税金ビジネスホテルの開業を待つまでもなく、現在進行形で、すでに計画段階の民業圧迫は行われているとの指摘を受けてきた政策審議官・西田喜一郎氏は、「民業圧迫しているつもりはなく、民間事業者が撤退するのは民間の自己都合である」という、およそ市民と議員の意見など聞くつもりのなさそうな答弁を繰り返している。
市が、市民に対して本事業の説明をしないのは、観光消費額や民業圧迫についての論理的破綻を認めたくないためなのだろうかと思えてくる。
観光消費額について再確認すると、本事業の初期設定の通り、市内民間ホテルから四分の三の宿泊客を奪ってくる形で税金ビジネスホテルが成り立つというのであれば、宿泊客の増加は四分の一、観光消費額も市が主張する5億円から10億円の四分の一しか増加しないことになる。
20年間で25億円から50億円の観光消費額があり得るとしても、初期費用として宿泊室の建設費に15億円かかっており、実質、20年かけて10億円から35億円しか経済効果がないということになる。
しかし、閣議決定違反であることを指摘された後に、市は、「大林組グループのカンデオ・ホスピタリティ株式会社(以下、「カンデオ」)が、自前で宿泊客5万人を純増させ、140室・70%の稼働率を達成するので、市内民間ホテルの事業を圧迫しない」と主張しはじめた。
その上で、税金ビジネスホテルの宿泊人数に奈良県の観光消費額の平均値を掛け算して年間10億円という観光消費額を主張するようになった。
しかしながら、すでに述べた通り、税金で140室のビジネスホテルを作る過程の中で、橿原タウンホテル37室、好生旅館の建替え新設ホテル約100室、近鉄グループの新設ホテルなど(部屋数不明)を失っており、市内の宿泊室数は純粋に140室増えるわけではなくなっている。
民業圧迫をするつもりがないと市がいくら主張しようとも、現実に市内の宿泊室数は橿原タウンホテルと好生旅館の合計で50室減り、100室以上の新設増加に歯止めがかかっている。
これが民業圧迫でなくて何であろうか。
つまりは、宿泊室数を減らそうとする民間ホテルについて市が何ら対処をしなかったこと、宿泊室数を増やそうとした民間ホテルについて、何ら対処せず歯止めをかけてしまったことにより、市内の宿泊室数が、税金でホテルを作った場合と、民間のなりゆきに任せた場合とで、全体として変わらない(あるいは、近鉄グループの分だけ増加に歯止めをかけている)結果を生んでいるのである。
市の、「カンデオが自前で5万人の宿泊客を純増させる」などという主張を鵜呑みにできるのであれば、好生旅館と連携する株式会社フクダ不動産や、近鉄グループが新築計画をためらったりはしないであろう。
税金ビジネスホテルと民間ホテルは、必ず競合する。
あえて、橿原市の宿泊客数が5万人に増えるということを鵜呑みにしたとしても、その宿泊室の数が民間ホテルを増加させることができなかったという犠牲の上に成り立っているのであれば、観光消費額が増えると言い得るものではないのである。
市が主張する観光消費額年間10億円は、基本的には信じ難い。
ただ、その計算式が新設ホテルの宿泊室数に依拠しているというのであれば、民間任せにしておいても好生旅館の建替えその他で達成できる数字であると考える。
市は、数年前に、同じ土地に民間ホテルを誘致しようとして失敗したため、今回は税金を投入すると主張しているが、国が外国人観光客の増加を推進している今も同じなのだろうか。
民間にホテルを作ろうとする動きがあるのは事実である。
株式会社フクダ不動産は、本事業の決定後、好生旅館の建替えを中断して、奈良市に140室のホテルを建設し始めている。
本事業は、新設の民間ホテルの運営の邪魔をしているに過ぎないと言える。
なお、念のため述べておくならば、市内の宿泊客数のデータには、数年前まで大和橿原シティホテルの約1万人が算入されていなかったところ、直近のデータにはそれが加えられているので、市が本当に税金ビジネスホテルによって5万人の純増を主張するのであれば、目標値は19万人に繰り上がっていなければならない。(その分、橿原タウンホテルと好生旅館の分は差し引かれなくてはならないが。)
この点、市は、最近になっても目標値の修正をあえてしておらず、市民への説明をせずにすませようとする姿勢とともに、宿泊客数の増加と観光需要額の増加の見込みに自信がないことがうかがえる。
(3)担税力・財政力度外視・少子高齢化時代に巨額な借金を背負えるのか?
税金ビジネスホテルについては、ホテル自身の採算性の問題のほかに、市自身の採算性の問題がある。
年間10億円という観光消費額が市の試算のとおり生ずるものであるならば、それは、必ずしも税金でホテルを建てることにより生じるのではなく、民間に任せておいても同じであるということはすでに述べた通りだが、実を言うと、この観光消費額があったとしても、これにより儲けた市内商店主たちが、市に対して法人市民税の所得割をどの程度納めてくれるのかという試算はできておらず、市自身の歳入として見込める金額はないからである。
(2015.06.12 : 平成27年6月定例会(第3号)本文インターネット検索による発言NO.178)
行政は商売をしているわけではないので、住民の福祉のために支出した金額が儲けをともなって返ってこなければならないとは言わないが、(ただし、違法・不当な点がある場合には別である。)少子高齢化が進む中で、人口あるいは担税力の高い生産年齢人口の数は減少していく。
全国の自治体において公共施設の維持管理費が問題となっており、週刊ダイヤモンド2013年3月2日 ハコモノが地方を潰すP.155の試算では、橿原市は704自治体のうち、ワースト274位。
現在より41.1%、公共施設の延床面積を減らしておかなければ、将来にわたっての維持管理ができないと言われている。
また、週刊ダイヤモンド(およびデイリーダイヤモンド)2013年6月8日 2040年全国市町村財政貧乏度ランキングP.124によれば、高齢化が進み、歳入のあてのない橿原市の未来の貧乏度は216.3で、1652自治体のうちワースト254位、10万人以上都市では258自治体のうちワースト54位と、危機的ですらある。
先進的な自治体においては、新築のハコモノを作らないということを基本に、従来のハコモノの配置を見直して、維持管理しなければならないハコモノの数を減らしていっている。
起債償還だけでなく、税金ビジネスホテルをはじめとしたハコモノの維持管理費用は、20年後、大林組グループとの契約が切れたころにちょうどピークになるはずだが、その頃、市の財政は今より厳しくなっている。
橿原市のように、税金でホテルと分庁舎を建てる、本庁舎も建て直すか耐震を行う、八木北の市営立体駐車場を取り壊して地下駐車場も検討するなどと、新設のハコモノを次から次に考えているのは、時代錯誤としか言いようがない。
自治体が本来なすべき住民福祉のため、本事業の白紙撤回を強く求めたい
。