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Amore eterno

2012年1月、イタリアを旅してきました。

ローマからフィレンツェ、ミラノとES(鉄道)で移動。

また行きたぁい!

旅日記と写真に、恋愛のエッセンスを盛り込んでみました。

Amore eternoとは、イタリア語で『運命の人』という意味だそうです。

自分は惚れやすい人間ではなくて、酒が弱いし警戒心も強いので、ワンナイトラブなんて縁がないと思っていた。

それなのに、彼と出会った瞬間、私は恋に落ちてしまった。

その、音大出のジャズベースマンが店にやってきたのは夏の終わり。
In The Mood は母が経営するミュージックサロン、なんて言うと想像がつきにくいだろうが、要するに飲んでママがピアノを生演奏するほか、楽器を演奏するお客様が弾き語りなどを楽しめる、夜の大人の遊び場である。
母はもともとクラシック畑で、音楽一筋で生きてきたため、その頃の人脈などから繋がった常連のお客様は、みな音楽を心から愛し品のある飲み方しかしない。
よく夜のスナックでありがちな酔客の口説きや大騒ぎをもっとも嫌うのが、集まるお客様たちであるから節度と品位が自然と保たれる。ハイレベルなお客様に囲まれて、私は娘という立場で手伝いながら上質な音楽に日々包まれていた。

60年代、70年代の音楽全盛期にフォークなどからギターを引き始めたという経緯が多いせいか、はたまた母の元々の知人が多いせいか、客層は50代、60代が中心。
40代でも若いと言われるこの店に、27歳のベースマンー上川裕也が訪れたのは偶然という名の奇跡であったとしか思えない。
さらに、私は昼間も仕事をしているため、店には気まぐれでしか出勤しない。
そして、驚くべきことに裕也を連れてきた客は、けして常連ではなく半年ぶりくらいの来店だったのだ。

あの、夏の火曜日、たまたま私が店にいる時に、あまり来ることのない客が裕也を連れてきた。それだけでも偶然の連続なのに、裕也は私がバンドマンの中で最も惹かれるベーシストであり、店で演奏してもらったその技術と音楽に対する真剣な眼差しに魅力を感じたのだった。
翌日の水曜日にライブをする、という話が出たので私はその場のノリで『行きます!』と答えた。本音をいえば、その時は相手が客だから行こうが行くまいが一応言っておこうという程度で、翌日面倒になれば断れば良いと思っていた。たまたま水曜日は昼間の仕事が休みで、ライブをする場所が店からすぐ近くだったので、とりあえず店に来てそこから抜け出せそうなら行こう、という感じだった。
ちょうど、4月からスタッフとして働いているアメリカ人のジャスティンもミュージシャンで、時折付き合いでライブに行っていたから雰囲気には慣れている。
それに、店にいるということは、あんまり忙しければそれを理由に断ることも出来るとずるい頭も働いた。

翌朝、起きた瞬間に『あー、やっぱり面倒臭いかも』と思ったのだが、Facebookに届いたメッセージを見て断りづらくなってしまった。昨夜、裕也から友達申請が来たので承認したところ、早速今日のライブについての案内と地図が送られてきていたのだ。
とりあえず返信して、用意をする。
夕方、いつもより早い時間に出て三宮をブラブラしていたら、前からどこかで見たことのある人物が歩いてくる。

『…あっ、裕也くん!?』

なんと昨夜会ったばかりのベースマンだった。今日はライブということもあってか、背中に大きなベースを抱えている。

『優梨子さん!こんにちは!』

向こうも相当驚いた様子で挨拶をしてきた。

『今夜、楽しみにしてますね。頑張ってください。』

他に言うべきことがなかったので、そう伝えるとあちらも笑顔で『ありがとうございます!』と去っていく。
断るタイミングを完全に逃した私は、店についてから母にそのことを伝え、20時過ぎに抜け出した。ジャスティンもいたし、残念ながら店も暇で『ごゆっくりー』と見送られながら。